ワンちゃんの便の様子がいつもと違うときや動物病院で健康診断を受ける際などに、「便を持参してください」と言われたことはありませんか?

便は、わんちゃんにとっても重要な健康のバロメーターのひとつです。

便の形や硬さ、臭い、排便の回数や様子に変化が見られた場合は、何かしらの体の異常を知らせくれている可能性があります。

ここでは、犬の糞便検査でわかることや主な検査項目、便の採り方について解説します。

 

 

糞便検査を受けるときには

動物病院で糞便検査を受ける際には、おうちでの排便の様子を伝えましょう。

排便の回数や量、色、形、硬さ、血便はないかなどは診断の重要な手がかりとなります。

日頃から、便の様子をチェックする

ようにしましょう。

また、

ワクチンの接種歴や、消化管内寄生虫の予防薬の投与歴なども、記録しておく

と役立ちます。

 

 

糞便検査でわかること

糞便検査は、

便の色・臭い・形を確認

したり、

顕微鏡で病気の原因となるような微生物がいないか

調べたり、

腸内細菌のバランスが崩れていないか、異物や出血が混ざっていないか

などを確認する検査です。

 

これらの結果をもとに、便の状態が正常なのか異常なのかを判断します。

 

 

糞便検査の主な検査項目

① 便の性状

便の見た目や形を評価します。

・硬さ:液状便/形のない軟便/形のある軟便/硬い便(正常)/極度に乾燥した硬い便 などをスコア化して評価します。

・特徴的な所見:粘液便・鮮血便・メレナ(黒色便)などの有無を評価します

・臭い:酸っぱい臭いや腐敗したような臭いなどがないかを確認します。

・色:通常の便は茶褐色をしていますが、普段と違う色をしていないかを観察します。

 

 

② 顕微鏡による観察

顕微鏡を用いて、糞便中に寄生虫や細菌などの感染がないか、また炎症細胞や出血などがないかを調べます。

主な検査法には、糞便を直接スライドグラスに乗せて顕微鏡で観察する「直接法」と、

糞便を浮遊液に溶かして寄生虫の卵などを検出する「浮遊法」があります。

 

 寄生虫検査

寄生虫の感染の有無を調べる検査です。

寄生虫の卵は非常に小さいため、浮遊法などで検出することが一般的ですが、

寄生虫の幼虫や体の一部(片節)は肉眼でも見られることがあります。

 

 糞便検査で検出される主な病原寄生虫

● 線虫類(犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫、糞線虫など)

 

犬回虫

 

犬鉤虫

 

犬鞭虫

 

● 吸虫類(肝吸虫、肺吸虫など)

 

● 条虫類(犬条虫、マンソン裂頭条虫、エキノコックスなど)

 

瓜実条虫

 

● 原虫(ジアルジアトリコモナスコクシジウムなど)

 

 

 

 細菌検査

腸炎を起こす可能性のあるクロストリジウムやカンピロバクターなどが、糞便中に出現していないかを調べます。

 

 

③ 微生物抗原検査(検査キット)

犬パルボウイルスジアルジアに対しては、検査キットによる検査が可能です。

 

写真

 

④ PCR検査

糞便を外部の検査機関に送ることで検査ができます。

現在犬では、クロストリジウム、腸コロナウイルスジアルジア、クリプトスポリジウム、ジステンパーウイルスパルボウイルス、カンピロバクターなどの感染の可能性を調べることができます。

下痢などの消化器症状が続いているにもかかわらず、院内の糞便検査で病原体が検出されない場合や、内視鏡検査などの精密検査に進む前のスクリーニング検査として用いられる検査です。

 

 

⑤ 染色試験

糞便にズダンⅢやルゴール液という特殊な染色液を加えることで、脂質や炭水化物の消化不良の程度を調べる検査です。

慢性的な軟便や下痢体重減少がみられる場合などで行われることがありますが、確定診断には至りません。

 

 

⑥ 異物の混入

犬が食べ物でないものを誤食してしまった場合に、異物がそのまま便に排出されたり、異物の一部が便に出てくることがあります。便に異物を認めた時には、はやめに動物病院を受診しましょう。

 

 

 

糞便の採り方

犬が自然に排泄した糞便を、

清潔なビニール袋やラップなどに包んで動物病院に持参

しましょう。

人の親指の先ほどの量があれば検査は可能

です。

採取してから時間が経ってしまった便や、テッシュペーパーなどの紙類で包んだ便は、便が乾燥しやすく、検査結果に影響を与えてしまう可能性

があります。

より新鮮な便の方が検査に適している

ので、便を採取したらなるべく速やかに動物病院へ持参しましょう。

 

便の採取が難しい場合には、動物病院で採取してもらうことも可能なので、相談してみましょう。

 

 

 

便中に異物や寄生虫が見られたり、下痢や軟便が続いている時は、何らかの病気のサインである可能性があります。日頃から愛犬の便の様子をよく観察し、異常がみられたときには早めに動物病院を受診することで、病気の早期発見につながります。

 

 

 

 

(参考)

犬と猫の検査・手技ガイド2019 私はこう読む/interzoo

SA Medicine NO.47/interzoo

伴侶動物の臨床病理学/チクサン出版社

 

(写真の引用)

小動物 寄生虫鑑別マニュアル/Inter Zoo

 

 

★「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

 

 

 

★ワンペディア編集部からのメールマガジン配信中!

「ワンペディア編集部」では、愛犬との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、ワンペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。

 

 

 

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

詳細はこちら

関連記事

related article