概要
肺炎は、呼吸によって酸素と二酸化炭素を交換する働きをする肺が炎症を起こした状態のことをいいます。炎症を起こすと、この働きがうまくいかなくなり、呼吸が苦しくなります。健康な子が肺炎を起こすことはまれで、ほとんどの場合は何か他の病気があって、抵抗力が弱くなった場合に起こることが多い病気です。重症化すると亡くなってしまうこともあります。
こんな症状が出たら気を付けて
肺炎が単独で起こることはあまりありません。まだ飼い始めて1週間ほどの小さな子犬の場合は、環境の変化などのストレスから、ケンネルコフと言われる伝染性気管支炎という病気にかかりやすくなります。通常は軽い咳や鼻水が出るくらいで治療をして、1週間から2週間で治っていくものですが、たまにこじらせて肺炎を起こしてしまう子がいます。このような時は、咳がひどくなる、食欲があまりない、元気がない、じっとしているのに呼吸が速い、といった症状がよく出ます。犬の体温は人より高く、だいたい38度ほどなので、熱っぽいかどうかはわかりづらいかもしれません。
それ以外の月齢では、原因がいくつか考えられますが、出てくる症状は同じです。咳や鼻水、食欲が落ちる、元気がなくなる、呼吸が速い、舌の色が悪くなるなどありますが、これら全てが出るわけではありません。聴診器で肺の音を聞き、レントゲンを撮ってようやく診断出来るので、いくつかあてはまることがあれば診察を受けてください。
原因
細菌
さまざまな細菌が肺に感染します。犬の肺炎の中では一番多いのが細菌によるものですが、細菌に感染してしまうような異常が隠れていることが多くあります。体の中に空気中に含まれる病原菌が入り込まないようにする免疫系という仕組みがありますが、栄養不足やストレス、炎症、糖尿病などホルモンの病気、ウイルス感染などがあると、病原菌が入り込みやすくなってしまいます。
ウイルス
肺に感染するウイルスはいくつか知られていますが、ウイルス単独で症状を起こすことはまれで、二次的に細菌に感染することで症状が出てきます。犬アデノウイルス2型、パラインフルエンザウイルス、犬ジステンパーウイルスなどがよく知られていて、ワクチンも開発されています。
真菌
かびが原因の肺炎で、ブラストセミス、ヒストプラズマ、コクシジオイデス、クリプトコッカスなどがあります。
寄生虫
肺炎を起こすいくつかの寄生虫があります。腸に寄生する犬回虫は、卵の状態で口から犬の体の中に入り、成長していく途中で肺を通るため、子犬では肺炎を起こします。肺虫やフィラリアも肺炎を起こします。
過敏症(アレルギー)
細菌やカビの治療が効かず、様々な検査をしても原因が見つからない場合に、ステロイド薬による過敏な免疫反応を抑える治療でよくなるものです。
吸引(誤嚥)
口の中や喉の奇形、食道の病気などで、食べ物や胃の中身が気管の中に入ってしまい、その物や胃酸で肺の細胞が傷付いた結果、そこに細菌が入り込んで肺炎を起こすこともあります。高齢で飲み込む力が弱っていて、むせやすかったりする場合もなりやすくなります。
治療方法
抗菌薬
ウイルスに有効な薬はありませんが、二次的に細菌やかびに感染しているので、それぞれに応じて抗生物質や、抗真菌薬が必要になります。
気管支拡張剤
気管支を広げて呼吸を楽にしてくれるので、症状に応じて処方されます。
気道の水分補給
水はいつでも飲めるようにしたり、点滴をしたり、吸入器を使って気管や気管支に蒸気を送るネブライジングをしたりします。潤いを与えて咳を楽にし、免疫系の働きを補う効果があります。
酸素吸入
肺炎がひどく、呼吸が苦しくて食欲もないような場合は、酸素室に入院する必要があります。
予防
ウイルス性の肺炎は、ワクチンを接種することによって予防ができます。フィラリアや犬回虫は、駆虫薬を定期的に投与することで防ぐことができます。また、普段からフードの内容に気を配ったり、たくさん運動させてあげたりといった強い体作りで、病原菌に対する抵抗力をつけておくことも大切です。高齢になったり、病気で寝たきりになったときは、餌を食べさせるときは必ずついていて体を支えてあげたり、少しずつあげたり、食べ物が気管に入らないように注意してあげましょう。
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