目の周りの毛が黒く変色してしまっているワンちゃんを見たことがありませんか?これは、大量の涙が目からあふれて毛を濡らしてしまうことが原因で、流涙症または涙やけと呼ばれています。涙やけはひどくなると顔全体の毛が黒くなってしまう場合もあり、外見が悪くなるので飼い主さんが非常に気にされる病気でもあります。
こんな症状がでたら気をつけて
涙があふれて目の周りの被毛が茶色~黒色に変色してしまいます。常に濡れているので細菌が繁殖しやすく、そのせいで皮膚炎を患ってしまう子もいます。
流涙症がよく見られる犬種
■ マルチーズ
流涙症の原因は?
流涙症の原因は大きく分けて二つ考えられます。
刺激
目に刺激が加わって涙が大量に出てしまうのが原因です。睫毛の生え方が異常だったり、瞼が内側に入ってしまう眼瞼内反という病気など様々な原因があります。
●眼角形成不全に伴う流涙症
そんな中、最近増えてきているのが内眼角・外眼角形成不全に伴う流涙症です。正常な目はスリットが入ったような切れ長の目になるのが普通なのですが、眼角形成不全が起こるとスリットが入らずまん丸の目になります。
眼角形成不全は、
■ トイプードル
■ シーズー
■ パグ
など人気の小型犬に多くみられます。
眼角形成不全を持つ犬は眼に被毛が入りやすくなるので、涙が多くなってしまい流涙症を起こしやすくなります。
シーズーやパグは毛が固いので角膜が傷つきやすく、目に色素沈着を起こしてしまうこともあります。
鼻涙菅の閉塞
通常、涙は鼻涙菅という通路を通って目から鼻に流れる構造になっています。しかし生まれながらにこの鼻涙菅が狭かったり、閉塞していたりする場合は涙が目からあふれて流涙症を起こしてしまいます。
●鼻涙菅閉塞を起こしやすい犬種
■ プードル
■ コッカ―スパニエル
■ ベドリントンテリア
■ パグなどの短頭種
この他にも、結膜炎や腫瘍による涙道の圧迫でも涙が排出されづらくなり、流涙症を起こしてしまいます。涙やけがひどいなと思ったら一度動物病院を受診してみましょう。
鼻涙菅に異常があるかどうか確認するためにはフルオレセインという薬液を使うことが多いです。目に薬液をたらして3~5分以内に鼻の穴の周りに薬液が見られれば鼻涙管の詰まりはない、見られなければ鼻涙菅が閉塞していると診断します。
流涙症の治療は?
飼い主さんがどこまでの治療を選択されるかで治療方法は大きく変わってきます。毛の汚れ(涙やけ)が気になるだけであれば、
こまめに拭く
だけでも多少は効果が得られます。涙がついても毛が黒くならないサプリメントもあるので、それを使うのも一つの手です。また、流涙症に伴う細菌感染、皮膚炎が起こっている場合は抗生剤による皮膚炎の治療も必要になります。
流涙症を完全に治すことを目標にするなら、その原因を除去する
必要があります。
刺激がある場合
刺激になっている
睫毛を除去
したり、
手術で瞼を正常な位置に戻す
などのな治療があります。眼角形成不全の場合は、人間の美容整形手術のように
目の形を正常に整える外科的な治療
を行います。
鼻涙菅の閉塞がある場合
涙鼻菅の洗浄
鼻涙菅に何かが詰まって閉塞を起こしている場合は洗浄を行います。麻酔下で柔らかい針を目から鼻涙菅に向かって差し込み、生理食塩水を注ぎ込んで洗浄を行います。
外科的な治療
鼻涙菅が完全に閉塞していたり、目から鼻に抜ける穴がない(無孔涙点)場合は、手術を行って外科的に治療します。
涙やけの予防は?
残念ながら流涙症を予防することはできません。
ただし、こまめに涙を拭きとってあげることで涙やけはかなり軽減されますし、細菌の繁殖を防ぐこともできます。水で濡らしたティッシュやハンカチを使って、できるだけ涙を拭いてあげるようにしましょう。
獣医師の体験談
※あくまで体験の域を超えないものです。(病院によっては見解が異なります)
流涙症やそれに伴う涙やけは、特にトイプードルやシーズーで非常によく見られる病気です。飼い主さんが一番気にされるのは涙やけですが、私はどちらかというとしめった環境で細菌が繁殖して、目の周りに皮膚炎を起こしていることの方がも問題だと思っています。ひどくなると目の周りにかさぶたができて出血したり膿がたまったりするので、抗生剤や消毒液を使って早めに治療してあげる必要があります。
私が担当したワンちゃんでも鼻涙管洗浄を行ったことがあります。その子は去勢手術を目的に来院したマルチーズで、遠目に見てもわかるほど涙やけがひどい状態でした。フルオレセインで鼻涙管の検査を行った結果、明らかに鼻涙管が詰まっていました。飼い主さんが鼻涙管洗浄を希望されたので、去勢手術と同時に鼻涙管洗浄も行いました。
治療方法を説明したうえで鼻涙管洗浄を希望される飼い主さんはたまにいらっしゃいますが、手術を選択する飼い主さんはほとんどいらっしゃいません。腫瘍による閉塞などでなければ命にかかわる病気ではないので、そのためだけに手術をするのは…と思われる飼い主さんが多いようです。
しかしながら、流涙症を完治させるためには手術が必要なこともあります。手術には専門の知識や高い技術が必要になるため、一般の動物病院では対応できないこともあります。その場合は眼科の専門病院や大学病院を紹介されるかもしれません。
涙やけがどうしても気になる場合は、被毛の着色を薄くするサプリメントもありますので、かかりつけの先生に相談してみるのもいいでしょう。
「犬の目」に関するワンペディアの獣医師監修記事をご覧ください。
■目にゴミ:愛犬の目の中にゴミが…!下手に取るのは危険?正しい対処法とは
■角膜潰瘍:犬の角膜潰瘍
■角膜炎:犬の角膜炎
■結膜炎:犬の結膜炎
■涙やけ:犬の流涙症(涙やけ)
■チェリーアイ:犬のチェリーアイ
■白内障:犬の白内障の症状や予防法
■緑内障:犬の緑内障
犬種や季節、年齢など、うちの子がかかりやすい病気を調べて予防するため、『うちの子おうちの医療事典』を、ご利用ください。
☞例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気を調べる検索し、調べることができます。
■ 目が赤い
■ 目が見えていない
■ 目の色がおかしい
■ 目を気にする
☞『うちの子おうちの医療事典』掲載の「目」に関するさまざまな病気の詳しい解説は、こちらをご覧ください。
■ 白内障
■ 核硬化症
■ 進行性網膜萎縮
■ 結膜炎
■ 緑内障
■ 角膜潰瘍
■ 乾性角結膜炎
■ 逆さまつげ
■ チェリーアイ
★「ワンペディア編集部」では、愛犬との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、ワンペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。
アイペット獣医師
詳細はこちら