国によって人気犬種に違いがある…ってみなさん考えたこと、ありますか?

世界と比較すると日本は圧倒的に小型犬種が人気の国です。私が住んでいるスウェーデンや、例えばアメリカと比較してみてもそれは明らか。これはもしかして日本の住宅事情を物語っているのかもしれません。

このように人気犬種のトレンドを見ることで、その国の状況や文化もある程度推し量ることができます。これ、とても面白いことだと思いませんか?そこで人気犬種を通して見るスウェーデンの犬事情を語ってみたいと思います。

人気犬種に大きな違いが

ここに日本とスウェーデンの人気犬種ランキングを示します。

 

日本とスウェーデンでは人気の犬種がかなり異なるということがランキングからわかりました。どうしてここまで違ってくるのでしょうか?

スウェーデン人気犬種の歴史

不動の人気だったシェパード

スウェーデンでは実は何十年もの間ジャーマン・シェパード(以下シェパード)が不動の一位の座を守り続けていました。私たち日本人からみるとシェパードだなんて「玄人好み」の犬に映るかも知れませんが、欧米ではスウェーデンに限らず最も人気の高い家庭犬の一つです。

しかし10年前からトレンドは一転、ラブラドール・レトリーバー(以下ラブラドール)にベストの座を譲るようになりました(ただしそれ以前もラブラドールは必ずトップ5に入る犬ではあったのですが)。今となってはシェパードは5位にまで落ち込んでしまいました。

運用犬としての活躍

ジャーマン・シェパードが欧米で人気があったのは、戦時中軍用犬として素晴らしい働きを行なった、ということがまだ戦後多くの人の記憶に新しかったという理由もあるでしょう。シェパードは確かに万能な犬ではありますが、誰もが飼えるわけではなく、それなりの犬の飼育経験も必要とされます。犬の飼育に慣れていない飼い主さんに飼育されたことで多くの問題犬もあらわれました。

ラブラド―ル人気へ

このように飼育の難しいシェパードと比べ、レトリーバー種というのは、人懐こくあまり見張り気質の強さもありません。初心者でも運動をきちんと入れて真面目に飼っていれば十分に楽しく暮らせる犬種です。そのようなラブラドールの飼いやすさに気がつき、世代が変わるごとに、シェパードから人気が移ったと思われます。

一方、日本では一時ラブラドールが流行ったこともありましたが、今はベスト10に入ることもなくなりました。

セレブの影響で小型犬ブーム到来!

今から20年前、それまでのスウェーデンでは絶対にありえない現象が起こりました。小型犬人気です。

その火付け役になったのは、チワワ。ハリウッドでセレブに抱かれるマスコット犬、というイメージがヨーロッパでも広がりました。次第に若い女性の間で小型犬飼いが流行。現在、多くの欧州諸国で小型犬といえば、チワワ(あるいはヨークシャー・テリア)がメジャーです。

この上過去4、5年の間で世界的に短頭種も大人気者に。スウェーデンもその例外に漏れず、フレンチブルドッグは10位にランクインしています。ただし、日本のようにトイプードルには熱狂的な人気は集まっていません。この意味で、日本のトイプードル人気というのは、国際的に見てかなりユニークな現象とも言えます。

お国自慢の犬もいる!

スウェーデンの上位ランキングを見てふと「イェムトフンドってどんな犬?」と思われた人もいるのではないのでしょうか(4位についている犬です)。聞きなれない名前ですよね?!

 

この犬は日本の柴と同様に北欧の地犬種です。おまけに雰囲気もちょっと似ています。立ち耳でくるりと巻いた尾、力強く凛々しい顔、日本犬風です。イェムトフンドというのは、他のどの国でも飼われていないとても珍しい犬種です。

しかし北欧にはこのランクでご覧の通り、とても多いのです。何故か?ここがまたお国事情のわかるところ。スウェーデンはヨーロッパの中でもフィンランドについて猟が盛ん、その中でもヘラジカ猟というのは最も一般的です(ヘラジカとは世界一大きな鹿です)。その猟にこのイェムトフンドが専門的に使われるというわけです。

 

スウェーデンの狩猟人口は国民10人あたりに1人。かなりの高い割合。だからこそ、イェムトフンドが最も多い犬種の一つとしてランクに入るのも無理はありません。もっともこの犬は決してペットとしてだけ飼われることはありません。

 

 

こんな風にその国人気犬種を分析することで、その国における犬への見方、人々と犬の繋がりのあり方も垣間見ることができます。それもそのはず、犬と人というのは切っても切れない関係だからなのですね。

ライター

藤田 りか子

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