外耳炎治療中の犬

 

ワンちゃんが頭をよく振ったり、後ろ足で耳の周りを強く掻いたりしてる姿を見たことはありませんか?そんな時はもしかすると、外耳炎になってしまっている時かもしれません。

外耳炎はどうしてワンちゃんに多いの?

外耳炎は、ワンちゃんの来院理由トップ3に入るほどよく見られる病気です。

犬の耳は人と同じように、外耳・中耳・内耳の3つに分けられており、外耳と中耳は鼓膜という膜で隔てられていますが、犬はこの鼓膜までの長さ(外耳道)が人に比べて長い構造になっています。また、耳の中の毛も生えやすいので通気性が悪く、湿気がこもることで耳のトラブルにつながります。

 

 

外耳炎は、垂れ耳の犬種(コッカー・スパニエル、ダックスフンド、レトリバーなど)や、外耳道に毛が生えやすい犬種(プードルなど)で起こりやすいですが、どの犬種でも起こる可能性があります。

外耳炎はなぜ起こるの?症状や検査方法は?

外耳炎を起こす原因は多岐にわたります。

愛犬が耳を痒がる、耳の色が赤っぽい、耳垢が増えた、耳が臭い、頭をよく振るなどの症状がみられたら早めに動物病院を受診し、耳やからだの状態を検査してもらいましょう。一般的には耳鏡検査などで耳の中の状態を確認し、耳垢がある場合にはそれを顕微鏡で観察して細菌や真菌(カビ)の増殖がないかなどを調べます。

 

耳が痒い柴犬

 

また、耳以外にも症状がある場合や、外耳炎が治りにくかったり繰り返している場合には、アトピーやアレルギー、ホルモンの病気など全身的な疾患がないかを調べるために、血液検査やエコー検査などを行うこともあります。その他、耳の中の腫瘤や異物などによって耳の穴が狭くなってしまうことで炎症が起こる場合や、ミミヒゼンダニの寄生によっても外耳炎になることがあり、治療法もそれぞれ異なります。

どんな治療薬があるの?

ここでは、一般的な外耳炎のときによく処方されるお薬について解説します。

 

<耳道洗浄液>

外耳炎の治療で最も大切なことは、耳道内を清潔にすることです。

耳鏡検査で鼓膜が破れていないことが確認でき、耳垢が増えている場合には、耳道の洗浄を行います。

 

耳垢が耳道内にあると、細菌や真菌などが増えやすく、また点耳薬の浸透を妨げてしまうので、まずは耳道洗浄を行うことが一般的です。日常のお手入れにも使用することができます。

ただし、炎症が強く耳を触られるのを嫌がったり、洗浄液が染みて痛がる場合には、先に内服薬などで治療をし、症状を和らげるケースもあります。

 

エピオティック(ビルバックジャパン)

中性かつアルコールを使用していないため、刺激性の少ない耳洗浄液です。2つの天然成分が配合されており、皮膚の常在微生物叢のバランスを整える効果もあります。

 

 

 

耳道洗浄の方法

1.犬の耳の穴に、耳洗浄液を注入する。(耳の穴から液面が見える程度まで)

2.耳の付け根を優しくマッサージする。

3.犬が頭をブルブルっと振るのを確認する。

4.耳の中の洗浄液と汚れが出てきたら、コットンなどで優しく拭き取る。

※耳の穴の中は非常にデリケートなため、綿棒で擦ると傷つけてしまう恐れがあるため、使用はあまりおすすめできません。耳のシワに溜まった汚れを拭き取りたいときは、耳洗浄液を湿らせたコットンで汚れを浮かせ、優しく拭き取るようにしましょう。

 

▼製品の詳しい説明や、耳そうじの方法はこちらをご覧ください▼

https://jp.virbac.com/products/dermalcare/epiotic

 

<点耳薬>

耳鏡検査や耳垢検査で、細菌や真菌の増殖がみられる「感染性外耳炎」では、耳につけるタイプの点耳薬が処方されます。

 

ウェルメイトL3(明治アニマルヘルス)

広範囲の細菌に有効な抗菌薬「オフロキサシン」、マラセチア皮膚糸状菌などの真菌に有効な「ケトコナゾール」、痒みを和らげるステロイド剤「トリアムシノロンアセトニド」の3つの有効成分を配合した点耳薬です。サラッとしたローションタイプで、刺激性の少ないお薬です。

1日1回、患部に3〜5滴を滴下・塗布して、耳の根元の部分を優しくマッサージします。原則として7日間を目安に使用し、状況に応じて14日間まで継続して使用する場合もあります。

 

 

 

【使用上の注意】

・鼓膜に穴が開いている犬には使用できません。

・ワルファリンを投与している犬では、併用に注意が必要です。

・妊娠・授乳中の犬には使用できません。

・妊娠中の方は、薬剤に直接触れないよう慎重に投与してください。

 

オスルニア(住友ファーマアニマルヘルス)

幅広い抗菌作用を持つ「フロルフェニコール」、抗真菌薬「デルビナフィン」、炎症と痒みを抑える「ベタメタゾン酢酸エステル」の3つの有効成分を配合した点耳薬です。トロッとしたゲルタイプの基材を使用しているため、耳の中に有効成分が行き渡りやすく、長く残るのが特徴です。

1週間間隔の計2回投与(初回投与から7日後に2回目を投与)で外耳炎を治療することができるとされており、点耳を嫌がるワンちゃんへのストレスを極力減らすことができるお薬です。

 

 

 

【使用上の注意】

・鼓膜に穴が開いている犬、全身性ニキビダニ症の犬、4ヶ月齢未満の犬、妊娠・授乳中の犬には使用できません。

・ミミヒゼンダニをはじめとする外部寄生虫の感染が原因の外耳炎の場合には、駆虫が完了するまで使用は控えましょう。

・人や犬の眼に刺激性があるため、投与中や投与直後に犬が首を振って薬剤が飛び散らないように注意しましょう。

・妊娠中の方は、薬剤に直接触れないよう慎重に投与してください。

 

 

<内服薬>

耳に強い炎症があり、耳道が腫れて狭くなってしまっている(狭窄)場合には、痛みを伴うことも多く、耳道洗浄や点耳を行うことが難しい場合があります。そのような時は、まずは飲み薬で炎症や狭窄を和らげ、それと併行して感染などに対する治療を進めていきます。

 

グルココルチコイド 製品名:プレドニン錠(シオノギ製薬)

副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドというホルモンをお薬にした「ステロイド剤」とよばれる種類のお薬です。強力な抗炎症作用や免疫抑制作用を持つため、強い炎症や痛みを伴う外耳炎やアトピー性皮膚炎などに有効です。1日1回で効果を発揮します。

 

 

 

【使用上の注意】

副作用として、多飲多尿(飲水量やおしっこの量が増える)、多食(食欲が増す)、脱毛、免疫力の低下、筋力の低下、肝臓への負担、胃粘膜への障害などが知られています。特に高容量もしくは長期間使用すると、重篤な副作用が起こるリスクが上がるとされています。

また、持病がある場合にはステロイド剤の使用を控えた方がよいケースもあるので、獣医師とよく相談しましょう。

最後に

外耳炎は犬で頻繁にみられる病気のひとつであり、軽度のものでは1〜2週間程度お薬による治療をすることでおおむね改善します。しかし、慢性化してしまうと外科手術が必要となってしまう病気でもあります。そうならないために、愛犬の耳を定期的に観察・お手入れし、異常がみられたら早めに動物病院を受診しましょう。

 

<うちの子おうちの医療事典>

外耳炎と似た症状が出る病気を、獣医師監修のオンライン医療事典で調べてみましょう。

耳を痒がる・かいている

耳が赤い

耳垢が多い

耳が臭い

頭を振っている

 

 

 

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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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