Dog bite

 

愛犬が攻撃的になるとき、そこには必ず理由があります。とても怖い思いをしたり、とても嫌な思いをしたり、なにかを必死で守ろうとしたりして、攻撃的になってしまうことがほとんどです。そのため、動物行動学の治療では、まず飼い主さんのお話を丁寧に聞いて、なにが愛犬を攻撃的にさせているのか、きっかけを探ることから始めます。

しかしまれに、全くきっかけがないにも関わらず、いきなり攻撃を加えてくることがあります。このときの攻撃は突発的で、制御できないほど激しく、噛まれた飼い主さんは重傷を負うことがほとんどです。このようなケースでは、犬の意思とは無関係に、脳神経系の異常によってひきおこされている可能性が指摘されています。

 

 

脳神経系の異常が原因となる場合、どのような症状がひきおこされるのかはまだ明確になっておりませんが、今までの診察からは次のような症状が見られました。

  • 今までまったく攻撃行動が見られなかった子が、ある時期を境に突然攻撃をするようになる。
  • 攻撃をするときまたは攻撃をする直前、目が据わるなどいつもとは違う表情になる。
  • 攻撃のきっかけが一貫していない。
  • うとうとしているような眠りが浅い時に、攻撃が起きやすい。

この発作による攻撃行動については、まだ詳しい原因などはよくわかっていませんが、「てんかん発作」が影響しているのではないかと言われています。てんかんに有効な、抗てんかん薬を使ったことによって治った例を挙げて説明します。

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Portrait of a funny brown and fluffy dog studio shot

テリア系ミックスの女の子(5歳)は、仔犬の頃からとてもフレンドリーで攻撃性は一切見られない子でした。しかし、3歳を過ぎた頃から、ちょっとした物音に敏感になり、触ろうとしたり、抱っこをしようとして手を差し出す、寝ている時に人間が近くを通るといった際に、突然咬んでくるようになったそうです。一度攻撃が始まると、2~3日は連続して攻撃しやすくなる日が続くのですが、飼い主さん側が気を付けて生活するようにしているとしばらくして落ち着き、2~3ヵ月は攻撃が起きないというサイクルを繰り返していました。

カウンセリングをしてみても明確なきっかけが見つからなかったため、脳波の測定検査を実施したところ、脳波に異常が見つかり、てんかんであることがわかりました。

そこで、攻撃が起こる状況は可能な限り避けるように生活をして頂きつつ、基本的なトレーニングの実施と同時に、抗てんかん薬の投薬を開始しました。

投薬開始の頃は、何度か攻撃行動は起きていましたが、薬の量を調整し、ここ1年以上攻撃行動は一度も起きていません。全体的に穏やかになり、飼い主さんも「咬まれるかもしれない」という不安を抱くことがなくなったそうです。「以前のあの子に戻ったみたい!」と喜んでいました。

 

このように、病気が影響して攻撃的になっていることがあるのです。どんなにおとなしくていい子でも、自身の意思とは無関係なところで、飼い主さんを傷つけてしまう場合だってあるのです。もし突如愛犬の様子が変わったら、叱ったり無理なトレーニングをしようとしたりせず、まずは一度獣医さんに相談してみるといいでしょう。

菊池 亜都子
菊池 亜都子

東京女子大学文理学部を卒業後、一般企業に就職するが、幼い頃に抱いていた獣医...

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