「うちの子、病院ではすごく怖がって唸ってしまうんです」

「暴れてしまうので、十分な検査ができないんじゃないか……」

そんな不安を抱えているご家族は少なくありません。

 

ワンちゃんが動物病院へ来て緊張したり、怖がったり、攻撃的になったりするのは、当然の反応です。ですが、そのような繊細な性格の子には、医療との関わり方に少しの工夫が必要です。

 

性格が診療にどう影響し、どう備えればよいのかをお話しします。

 

 

性格が診療に及ぼす影響

ワンちゃんの性格(怖がり・攻撃的・興奮しやすいなど)は、実は診断の精度や治療の選択肢に直接関わってきます。

 

〇 検査数値への影響

極度の緊張や興奮は、血圧、心拍数、さらには血糖値や白血球数などの数値を一時的に上昇させます。「病気による異常」なのか「緊張による変化」なのかの判断を難しくさせることがあります

 

〇「触診」の制限

例えば、お腹を触られるのを嫌がって力を入れてしまうと、腹部の触診が十分にできなくなる可能性があります。

 

〇ストレスによる体調悪化

特に心臓病を持っている子の場合、病院での過度なパニックは心臓に大きな負担をかけ、帰宅後にぐったりしてしまうリスクがあります。

 

 

 

犬の性格的に不安を感じられた場合のアドバイス

 

① 「事前の申告」が最大の武器

予約時や受付で「怖がりで唸ることがある」「触られるのが苦手な場所がある」と伝えていただくことで、病院スタッフもそれに応じた準備ができるので助かります。

例えば、

• 待合室ではなく車内で待機していただく

• 他のわんちゃんと遭遇しない経路から院内に入っていただく

など、病院側も体制を整えて診察に進むことができます。

 

② 早期から「口輪」や「エリザベスカラー」に慣れさせる

口輪に抵抗がある飼い主さんも多いですが、口輪は愛犬を守るための道具です。

口輪をしていれば、万が一の噛みつきを防げるため、スタッフも過剰に押さえつける必要がなくなり、結果的にワンちゃんの恐怖心を最小限に抑えて素早く検査を終えることができます。

これは、エリザベスカラーでも同様の効果が得られると考えられます。

 

③ 「家での様子」を記録する

病院でパニックになる子は、診察室では「本当の症状」を隠してしまいます。

 家での歩き方

 咳の様子

 リラックスしている時の顔つき

これらを動画などで記録していただくことで、院内での触診や検査が制限されてしまった場合でも、診断の一助となることがあります。

 

 

 

 医療チームとしての協力

性格的にどうしても通院が難しい場合は、「お家で飲める鎮静薬(抗不安薬)」を事前に処方し、リラックスした状態で来院してもらうという選択肢もあります。

また、慢性疾患の管理であれば、頻繁な通院を避け、自宅でのチェック(体重や呼吸数)をメインにするなど、その子の性格に合わせた治療計画を立てる場合もあります。

飼い主さんが「迷惑をかけて申し訳ない」と通院をためらうことが、病気悪化のリスクとなることがあるので、愛犬の体調に変化がみられた時には、ためらわずに動物病院に相談してみてください。

 

 

 

おうちでできるトレーニング

とくに慢性疾患(心臓病や腎臓病)で長期の通院が必要な子にとって、病院のストレスを減らすことは、病気の進行を遅らせることにもつながります。そのために、お家でできるステップを紹介します。

 

病院嫌いを和らげる3つのステップ

1. 「体のどこでも触れる」練習(ハズバンダリートレーニング)

診察では、目、耳、口の中、そして足先やしっぽの付け根など、普段触らない場所を触診されます。

• 方法:おやつを与えながら、

「耳を1秒触る」→「おやつ」、

「足先を1秒触る」→「おやつ」

を繰り返します。

• ポイント:「触られる=良いことが起きる」と脳に覚えさせます。嫌がる前にやめるのがコツです。

 

2. 「診察台」のシミュレーション

ワンちゃんにとって「高いところに乗せられる」のは大きな不安要素です。

• 方法:お家のテーブルや、お散歩コースにあるベンチなどの少し高い場所に抱っこで乗せ、そこですぐにおやつをあげたり褒めてあげた後、すぐに降ろします。

• ポイント: 「高いところに乗っても何も怖いことは起きない」という経験を積ませます。

 

3. 「キャリーバッグ・車」を安心できる場所に

「バッグを出されたら病院だ!」「車に乗ったら病院だ!」という予知能力が、病院に着く前のストレスを増幅させるので、それを緩和させることも重要です。

• 方法: 部屋の中にキャリーバッグを常に出しておき、その中でごはんをあげる。

• 車に乗せて、近所を一周して帰ってくるだけの日を作る(病院に行かない日を作る)。

 

 

診察当日のアドバイス

上記のようなトレーニングと並行して、当日に使えるちょっとした工夫も効果的です。

〇「とっておき」の持参

普段から食べ慣れている好きなおやつを少量用意してください。

院内に入れた時や、診察台に乗れた時などにごほうびとして与えることで、病院への不安を多少緩和できる可能性があります。

※持病で食事制限がある場合や検査の前などは、おやつを与えてはいけない場合もあります。事前に獣医師に相談してみてください。

 

〇 飼い主さんが「深呼吸」する

わんちゃんは飼い主さんの緊張を敏感に察知します。「暴れたらどうしよう」「病院に迷惑をかけたらどうしよう」という不安は、愛犬も感じ取ってしまう可能性があります。

診察室では、あえて飼い主さんがゆったりした動作で、穏やかな声で話しかけるように意識してみてください。

 

 

動物病院が苦手な犬でも、病気や怪我になってしまった時には受診が必要となります。

そんなときに、少しでもストレスなく受診できるよう日頃からトレーニングをしたり、動物病院までの道に慣れさせておくことはとても重要です。

受診に悩んだ時には、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

 

 

 

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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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