「痒み」を主訴に動物病院を受診するわんちゃんは非常に多く、中には何らかの食べ物や環境因子に対するアレルギーがある場合もあります。

 

人ではアレルギーやアトピーの診断の手がかりとして、血液検査を行う場合が少なくありませんが、犬のアレルギー性皮膚炎や犬アトピー性皮膚炎の診断に用いられる検査(アレルギー強度検査、アレルゲン特異的IgE検査、リンパ球反応検査など)は、アレルギーの診断のはじめに行うべき検査ではないとされています。適切なタイミングで実施することや、ひとつの検査結果から判断せずに、症状やこれまでの治療の経過と併せて総合的に結果を捉える必要があるため、これらの検査をどのタイミングで行い、検査結果をどう読み解くべきかについては専門家でも意見が分かれる部分があります。

 

 

食物アレルギーが疑われる場合の検査とは?

 

アレルギー性皮膚炎の中でも食物アレルギーが疑われる場合、他の皮膚疾患と同様に、まずは細菌・マラセチア・真菌・外部寄生虫などの感染がないかを調べて、必要に応じて治療を行います。

その上でなお、食物アレルギーが疑われる場合には、食物除去試験と食物負荷試験を行います。これらの試験は、皮膚症状の原因の特定や症状の緩和につながる可能性があります。

 

 

STEP1:食物除去試験

食物除去試験とは、原因アレルゲンとなる食物を含んでいないフード(除去食)を一定期間(約8週間)与えます。この際、除去食以外の食べ物を少量でも摂取してしまうと、正確な評価ができないので注意が必要です。

 

注意事項

 除去食を与えている間は、それ以外のものは一切口に入れないようにすることが重要です。

 子どものお菓子や、落ちている食物のカスなどを拾い食いしたりさせないようにしましょう。

 他の犬の糞を食糞させないようにしましょう。

 同居の動物とは厳密に食事を区別しましょう。食器もその子専用のものを使用してください。

 試験開始前に、普段主にお世話をしている飼い主さんだけでなく、家族全員で試験のルールを確認し ましょう。

 おやつ、歯磨きガム、歯磨き剤、フレーバー付きの薬剤、ゼラチンカプセルの薬剤、サプリメントなども試験期間中は与えないようにしましょう。

 

食物除去試験で症状の改善がみられた場合には、続けて食物負荷試験を実施します。

 

STEP2:食物負荷試験

食物除去試験前に与えていた元のフードを1〜2週間、少しずつ量を増やしながら与え、症状の再発がみられた場合には食物アレルギーと診断します。

 

注意事項

 フード以外にも、フレーバー付きの薬剤や歯磨き剤なども負荷試験の対象となります。

 負荷試験を行う場合は、1回につき1品目ずつ行います。例えば、元のフードを負荷して症状の再発がみられなかった場合、次に歯磨きガムを負荷して、それでも再発がなければ次はおやつ、というように、期間をあけながら1品目ずつ確認しつつ進めていくことが大切です。

 負荷により症状の再発がみられた場合には、その食物に対する負荷試験は中止しましょう。もし続けて他の品目を調べたい場合には、一度除去食を十分な期間継続して与え、症状が落ち着いたことを確認してから、次の品目を負荷するようにしてください。

 

 

 

食物除去試験および負荷試験は、時間のかかる検査と思われるかもしれませんが、犬の食物アレルギーで最も有効な治療法は、食物アレルゲンを摂取しないことです。特に食物除去試験は、検査の目的だけでなく、治療も兼ねた有用な試験なので、もしこの試験を提案された場合には、ご家族の協力のもとトライしてみることをおすすめします。

 

 

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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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