犬は人間のように、痛みや少しの体の異変を言葉で伝えることができません。そのため、飼い主さんが愛犬の日々の様子をよく観察し、病気のサインを見逃さないことが、病気の早期発見につながります。しかし中には、初期症状がほとんどない、あるいは他の病気と見分けがつきにくい病気も多く存在します。そのため、定期的な健康診断を受けることが非常に重要です。

 

今回は、初期症状がわかりにくいけれども遭遇率の高い犬の病気をいくつかご紹介します。

 

 

1. 慢性腎臓病

腎臓は、体内の老廃物を濾過して尿として体外に排出する役割をもつ重要な臓器です。慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気で、基本的に一度失われた機能は回復させることができません。そのため、早期発見・早期治療により、進行を極力遅らせることが重要です。

 

〇 早期発見が難しい理由

腎臓はバックアップ能力が非常に高い臓器のため、腎臓全体の機能の75%が失われるまで、目立った症状が現れないことが多いとされています。そのため、日頃から愛犬の様子をよく観察するとともに、定期的な健康診断(血液検査尿検査など)を受けることも重要です。

 

 注意すべきサイン

・水を飲む量が増えた

・尿の量が増えた、尿の色が薄くなった

・食欲が低下している

・痩せてきた

・元気がなくなる

・口臭がきつくなる(アンモニア臭)

・嘔吐をしている

 

 

 

 

2. 心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)

犬の心臓病の中で最も多い僧帽弁閉鎖不全症は、中〜高齢の小型犬に多くみられる病気です。心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁という弁がうまく機能しなくなることで、血液が逆流し、進行するとさまざまな症状を引き起こします。

 

〇 早期発見が難しい理由

心臓病は進行とともにさまざまな症状が現れるようになりますが、初期段階ではほとんど症状がみられません。また、進行して活動性の低下(疲れやすくなる)や咳などの症状が出ても、年齢や、気管などの病気が原因と見落とされてしまうこともあります。心臓病は進行して心不全の状態になると、命に関わる症状(呼吸困難、肺水腫、循環不全など)につながるので注意が必要です。

定期的に健康診断を受け、聴診やレントゲン検査、超音波検査などで心臓に異常がないかを確認することが早期発見につながります。

 

 注意すべきサイン

・疲れやすくなった、散歩を嫌がるようになった

・食欲が低下している

・咳が出る(とくに運動後や興奮時、夜間に頻度が増えるなど)

・呼吸が速い(安静時で、1分間に40回以上)

・舌の色が紫色になる(チアノーゼ)

・お腹が膨らんでくる(腹水)

 

 

 

3. 腫瘍(がん)

犬は高齢になるとともに、体のさまざまなところに腫瘍ができることがあります。中でも、悪性(がん)の場合は転移を起こしやすく、命に関わることもあります。また、肝臓腫瘍や脾臓腫瘍など、内臓にできる腫瘍は画像検査を行わなければ早期発見が難しく、症状が現れたときにはがんのステージが進行しているケースも少なくありません。

 

〇 早期発見が難しい理由

皮膚などの体の表面にできる腫瘍は比較的発見しやすいですが、内臓や骨にできる腫瘍、血液の腫瘍などは初期症状が乏しく、進行してから異変に気づくケースも少なくありません。

また、定期的な健康診断は早期発見につながりますが、血液検査のみでは腫瘍は発見できません。血液検査と合わせて、レントゲン検査や超音波検査、CT検査などの画像診断を行い、病理検査によって診断が可能となります。このように、確定診断までにさまざまな検査を行う必要があることも、早期発見・診断が難しい要因の一つとも言えます。

 

 注意すべきサイン

腫瘍にはさまざまな種類があり、できる部位や腫瘍の種類によって現れる症状もさまざまです。

・体にしこりや膨らみがある

・食欲が低下してきた

・体重が減ってきた

・元気がない

・嘔吐や下痢をしている

・排泄物や吐物に血が混ざる(血尿、血便、吐血など)

 

 

 

 

4. 肝臓・胆嚢の病気

肝炎肝硬変肝臓腫瘍などの肝臓病や、胆石・胆泥症などの胆嚢の病気は、初期症状はほとんどないため発見しにくい病気のひとつです。

健康診断等の血液検査で肝酵素に異常値がみられ、さらに画像検査などを行うことで発見されることが多いですが、進行すると黄疸が出たり、元気・食欲の低下、嘔吐などの症状が現れるようになります。

胆嚢の病気はどんな犬種でもかかる可能性がありますが、肝臓病のリスクが高い

ベドリントンテリア、ラブラドールレトリーバーコッカースパニエルウエストハイランドホワイトテリアダルメシアンミニチュア・シュナウザーなどでは、

とくに注意が必要です。

 

 

 

病気の早期発見のために

これらの病気は、明らかな症状が現れたときにはすでに病気が進行しているケースが少なくありません。

病気を早期に発見するためには、飼い主さんがご自宅でみている愛犬の「普段との違い」は非常に重要なヒントとなります。

 

〇 日々のスキンシップ

体をなでたりブラッシングをする際には、しこりがないか、痛がるところがないかなどをチェックしましょう。散歩の際には、歩き方にいつもと違いがないかをみてみましょう。

 

〇 生活や行動の変化

食欲、元気、飲水量、排泄の回数・量・質、睡眠時間など、日々の生活の中での行動を日頃から気にかけておくと、わずかな異変にも気づきやすくなります。気になることがあれば、メモなどに記録して、動物病院を受診するときに獣医師に伝えましょう。

 

〇 定期的な健康診断

見た目だけでは発見できない病気はたくさんあります。とくに、言葉で体調の異変を伝えることのできない動物は、症状があわられる頃には病気が進行しているケースも少なくありません。病気の早期発見のためには、定期的な健康診断がとても重要です。とくに高齢犬では、半年に一回以上の健康診断が推奨されています。

 

 

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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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