犬の毛や皮膚に白い粉のようなものがついていたら、それはフケかもしれません。極度に緊張したときなど、一時フケが出ることはありますが、基本的に健康な肌ではフケは出ませんので、フケがあるということは犬の皮膚に異常がおこっているということ。中には病気が原因でフケが出ていることもあるので注意が必要です。
ここでは獣医師監修のもと、フケが出る原因と対策について解説します。
そもそもフケってなぁに?
フケは、古くなった皮膚がはがれ落ちたものです。毛が生えていない場所の皮膚は、古くなると空気中のほこりなどと混じって垢となり、毛が生えている場所の皮膚はフケとなります。全身毛で覆われている犬の場合は、垢ではなくフケになるのです。
犬の皮膚は3週間で常に入れ替わっている
フケができる原因は皮膚が持つ「ターンオーバー」という性質にあります。皮膚は複数の層が重なってできており、常に下から新しい細胞が産まれ、古い細胞が表面に押し出されてはがれ落ちていきます。この一連の流れをターンオーバーと言います。このように古くなって皮膚の一番表面に押し出された細胞は角質と呼ばれ、この角質がはがれてフケになります。
皮膚のターンオーバーは常に行われており、健康な犬の場合は約21日間のサイクルでターンオーバーを繰り返しています。
健康な皮膚の場合
健康な子でも常にフケは作られているのですが、皮膚の状態が健康な場合、作られるフケの量は多くなく、ほとんどは皮膚の表面にいる常在菌によって分解されてしまうため、フケとして認識されないのです。
なぜフケが出るのか?
フケには、乾性フケと脂性フケがあります。白くカサカサした典型的なフケは乾性フケと呼ばれるタイプのフケです。一方で、少し脂っこく、においの強いフケは脂性フケと呼ばれます。
どちらもフケに分類されますが、その原因や病態は大きく異なり、対処法も違ってきますので、愛犬のフケがどちらのタイプなのかを知っておくことは非常に重要です。
フケが増える異常角化のメカニズム
では、フケはなぜ増えるのでしょうか?そのメカニズムにもやはりターンオーバーが関係します。ターンオーバーが21日のサイクルで維持されているときは、フケは細菌によって分解されて目立ちませんが、このサイクルが早くなる「異常角化」が起こると、細菌によって処理できる量以上のフケが出るため、フケが目立つようになるのです。
異常角化は皮膚の刺激により起こると言われています。つまり、皮膚の炎症や感染、異常な乾燥などの刺激を受けると、ターンオーバーを早くして皮膚をその刺激から守ろうとします。そうすると、古くなってはがれ落ちる角質が増えて、フケが増加するのです。
病気が原因のケースも
愛犬の皮膚病で通院される方も多いので(アイペット損保 調べ)、フケが出てたら早めにかかりつけの獣医さんに相談してください。ではここからはフケが増える病気をいくつかご紹介します。
ツメダニ症
フケはある種の寄生虫の感染によって増えることがありますが、最もフケと関係が大きいのがツメダニ症だと言われています。ツメダニは成犬への感染はほとんどなく、問題になるのは大部分が子犬です。ツメダニが感染すると皮膚に炎症が起こり、フケが増えてきますが、ツメダニは皮膚の表面に住んでそのフケなどを食べて生活しています。つまり、ツメダニは皮膚に炎症を起こしてフケを増やし、自分の食料を確保しているんですね。
ツメダニに感染すると、耳や腰、お腹の皮膚に痒みが出て、白いフケが増えてきます。重度の感染では痒みによるストレスから食欲不振や発育不良を起こすことがあると言われています。
ツメダニ症を治療しないと、かゆみが続き皮膚炎がひどくなってしまったり、人に痒みを起こすことがあります。背中に垂らすスポットオンタイプの薬で治療や予防ができますので、必ず動物病院で診てもらうようにしましょう。
皮膚糸状菌症
カビに感染した場合でもフケの原因になることがありますが、最も多いのは皮膚糸状菌症です。皮膚糸状菌はいわゆるカビの一種ですが、他の動物や土から感染することが多い菌です。
特徴的な症状はフケと円形の脱毛になります。痒みはあまり出ないこともありますが、徐々に脱毛が広がることが多いです。皮膚糸状菌症は人獣共通感染症であり、人にも円形の赤い皮膚炎を起こすことがあるので注意が必要です。
飲み薬や塗り薬、薬用シャンプーなどで治療をしますが、他の動物や人に感染しやすいので早めに治療を開始することが大切な病気ですね。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎でもフケが増えることがあります。アトピー性皮膚炎の場合は、乾性フケ・脂性フケのどちらのパターンも見られます。
アトピー性皮膚炎は痒みが強いことが多く、皮膚を舐めたりかいたりする行動が増えてきます。アトピー性皮膚炎は病気ではありますが、体質の一つであり、それを根本的に治すことは難しいです。ただし、薬や環境改善などによって症状が出にくくすることはできます。
痒みが強くストレスも大きい病気なので、愛犬のストレスを減らすためにも早めに治療の相談をしてくださいね。
脂漏性皮膚炎
ベタベタの脂性フケが増えてくる場合は、脂漏性皮膚炎が疑われます。シーズーやウェストハイランドホワイトテリアなどは、脂漏性皮膚炎の好発犬種です。
脂漏性皮膚炎は夏場に悪くなることが多く、皮膚のべたつきと独特の臭気が特徴の皮膚炎です。シャンプーや薬などで治療を行うことができます。
☞『うちの子おうちの医療事典』~脂漏症もご覧ください。
フケが増える病気以外の原因
フケは病気以外でも増えることがありますので、以下にその例を挙げておきます。
乾燥肌
特に乾燥する冬場にパラパラした乾性フケが出る場合は、ドライスキンの可能性があります。フレンチブルドッグやミニチュアピンシャーなどの短毛種で、ドライスキンはよく見られます。ドライスキンの場合は保湿スプレーや保湿成分入りシャンプーをすると改善することがあります。
ドライスキンはアトピー性皮膚炎でも起こりますので、ドライスキンがある場合はアトピーの可能性があることは頭に入れておきましょう。また、ドライスキンを放置すると、皮膚のバリア機能の低下から、皮膚の細菌感染などを起こしやすくなるので、注意が必要です。
シャンプーの影響
シャンプーの影響によってもフケが多くなることがあります。特にシャンプー後2,3日以内にフケが増えてくる場合はシャンプーが原因でフケが増えている可能性が高いです。
シャンプーの種類があっていない
シャンプーの種類は犬の肌質に合うものを選ばないとフケを増やす原因になってしまいます。
例えば乾燥肌の子に脱脂作用の強いシャンプーを使ったり、皮膚病のない子に抗菌シャンプーなどを使うと、皮膚の表面の脂の取り過ぎや刺激が強すぎることで皮膚にダメージを与えてしまいフケが増えてしまうことがあります。
シャンプー後のフケが気になる場合は、低刺激シャンプーを試してみるのもいいかもしれません。
間違ったシャンプーのやり方
犬のシャンプーを間違った方法で行ってしまうことも、フケが増える原因になります。よくある間違いは、以下の3つです。
シャンプーを別の場所で泡立てないで、直接毛に付ける
汚れを取るためにごしごし洗う
ゆすぎをしっかりしない
シャンプー後にフケが増える場合は、シャンプーの方法が間違っていないか再確認してみましょう。
*シャンプーの方法についてもっと詳しく知りたい方は、『愛犬がシャンプー好きに!正しい頻度と洗い方【獣医師が解説】』の記事をご覧下さい。
健康な犬にはフケはほとんど出ません。「フケが出ている」=「皮膚のコンディションが悪い」という認識を持ち、フケが多い場合にはその原因を考えてみましょう。乾燥肌や脂漏気味の子であれば保湿やシャンプーなどのスキンケアで良くなることもありますが、フケの原因には皮膚病やアトピーが関係していることがあります。フケを放置しておくと皮膚病がひどくなることもあるので、フケが多くて改善しない場合は、一度動物病院で相談してみてくださいね!
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☞本記事に関連する病気の解説はこちらをご覧ください。
皮膚病
皮膚糸状菌症
アトピー性皮膚炎
☞例えば、下記のような切り口で、
再発しやすい
長期の治療が必要
初期は無症状が多い
命にかかわるリスクが高い
生涯かかる治療費が高額
高齢犬に多い
病気の進行が早い
緊急治療が必要
入院が必要になることが多い
かかりやすい病気
他の犬にうつる
人にうつる
予防できる
子犬に多い
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