人間の世界では、多くの人が1年に1度の健康診断を受けますよね。10代、20代の頃はあまり健康に気を使っていなかった人でも、年齢を重ねるにつれ、健康への意識が高くなるのではないでしょうか。

健康診断が大きな病気の早期発見・早期治療に有効なのは、人も犬も同じです。もしかしたら犬は人間以上に、健康診断は必要かもしれません。ここではなぜ健康診断が必要なのか、その理由について解説します。

犬にとって健康診断が大切な理由

犬にとって健康診断が大切な理由は3つあります。

犬は「自覚症状」を伝えられない

日々の暮らしの中で犬の病気を発見するためには、飼い主さんが気付いてあげる必要があります。犬は言葉が話せないので、「気持ちが悪い」「頭が痛い」「体がだるい」などの症状を飼い主さんに伝えることができないからです。

しかし飼い主さんが、「なんだかこの子、具合が悪そうだな。」と気付いてあげられる頃には、病気がかなり進行している可能性があります。私たち人間も体調が悪くなったとき、周囲から「顔色が悪い。」「具合が悪そう。」と気付いてもらえるのは、かなり状態が悪くなってからのことが多いですよね。

自分で症状を伝えることができない犬の病気を早期に発見することは非常に難しいので、健康診断につれていってあげることがとても大切なのです。

獣医さんが「犬の元気な時の状態」を把握できる

愛犬が元気なときに、病院に連れていく必要はないと思っていませんか?それがそんなことはないのです。かかりつけの獣医さんに、その子の健康な状態をきちんと把握してもらう必要があるからです。

ちょっと極端ですが、例を挙げてみましょう。たとえば、適性体重が3kgの犬がいるとします。もともと肥満気味で体重が4kgだったにも関わらず、癌(がん)が原因でどんどん痩せていき、3kgになってしまったとします。この状態で動物病院に連れていったとき、獣医さんは異常に気付けるでしょうか?触診だけでは癌に気付けないこともあるので、もしかしたら「理想体重をきちんと維持できていますね」で終わってしまうかもしれません。

大切なのは「健康なときからの変化」

言葉を話さない犬の診断をするとき、獣医さんが頼りにするのは、飼い主さんからの話と普段との違いです。この「普段との違い」は非常に重要です。

もし先ほどの犬を定期的に病院へ連れて行っていれば、獣医さんはきっと異変に気付くでしょう。短期間で、しかもごはんを食べているのに体重が減っているとなると、なにかしらの病気の可能性を疑います。そして精密検査の結果、癌があることを発見するでしょう。

ちょっと極端な例ではありましたが、健康なときにも病院に連れて行く必要があるということは、わかって頂けたと思います。

犬の成長と同じように、病気の進行も速い

犬の病状は急変します。ペットを病気で亡くした経験を持つ方のうち、愛犬の異変に気付いてから半年以内で亡くなってしまったという飼い主さんは50.8%もいました。(獣医師団体『Team HOPE』調べ)犬は人間の約4倍の速度で年を取るため、病気の進行速度も速いのです。

病気があまり進行しないうちに治療ができれば、治る可能性も高くなります。早期発見・早期治療のために、健康診断へ連れていってあげてくださいね。

動物病院の健康診断では何をする?

では、動物病院で行う健康診断は、具体的に何をするのでしょうか?一般的によく行われる健康診断は以下の通りです。

問診

まずは飼い主さんから普段の様子を聞きます。なにか変わったことや飼い主さんが気になっていることがないかを確認します。些細なことでもいいので、変化があればできるだけ細かく伝えましょう。「散歩に行きたがらなくなった」「寝ていることが多くなった」「お水をよく飲むようになった」など、ちょっとしたことが大きな病気を見つける鍵になることがあります。

飼い主さん自身が、普段から愛犬の様子をよく観察することも大切です。

身体検査

身体検査もとても重要な健康診断の項目です。体重測定や体温を測るほか、五感を使った以下のような検査を行います。

視診

体を目で見て異常がないかをチェックします。粘膜の色(貧血や黄疸)、皮膚や口の中の異常、歩き方の異常、呼吸の異常などをチェックします。

聴診

聴診器を使い、心臓や肺の音に異常がないかどうかをチェックするのが聴診です。心臓病や気管支炎などの可能性がある場合には異常な音が聞こえます。

触診

体を触って異常がないかを見ます。体表やお腹の中の腫瘤(腫瘍)の有無、リンパ節の腫れ、痛みはないかなどを見ていきます。

血液検査

健康診断として一般的によく行われるのが血液検査です。血液検査では、血液の中の成分を調べて、その数の異常を基にどこに異常があるのかを見つけます。動物病院内で血液検査をする場合には即日、外部検査センターに血液検査を依頼する場合には数日、検査結果が出るまでに時間がかかります。

 

血液検査で一般的にわかることは以下のような内容です。

 

□貧血の有無

□炎症の有無

□血糖値の異常(糖尿病や低血糖)

□肝疾患の疑い

□疑い

□その他の異常(カルシウム、電解質、脂質の異常など)

 

血液検査は非常に広い範囲の病気を調べることができますが、すべての病気を見つけることができる万能な検査ではありません。特に、心臓・脳神経・胃腸・内臓の腫瘍などの病気は、血液検査で異常が出てこないことも多いのです。

画像検査

画像検査は体の内部を画像化して異常を検出する検査です。血液検査の弱い部分を補うことができるので、血液検査と組み合わせることで病気を発見できる確率が高くなります。画像検査にはレントゲン検査と超音波検査があります。

レントゲン検査

レントゲン検査は、X線を体に通すことで体の内部の様子を知ることができる検査です。骨や肺の異常、内臓の大きさや位置の異常の評価をすることができます。レントゲンによる健康診断で、関節炎や肺の腫瘍などが見つかることがあります。

超音波(エコー)検査

エコー検査は、超音波ビームを出してその跳ね返りを画像として検出する検査です。内臓の内部構造や動きを評価するのに優れています。レントゲン検査に比べて、検査時間がかかりますので、長時間じっとすることのできない犬の場合は鎮静が必要になることもあります。健診時の超音波検査で、お腹の中の腫瘍が見つかるケースが多いです。

 

 

自覚症状を伝えられない犬にとって、健康診断は病気の早期発見のための重要なツールです。愛犬とできるだけ楽しい時間を流す過ごすためにも、若い犬の場合は1年に1度、高齢の場合は半年に1度は健康診断に行くようにしましょう。

アイペット獣医師

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