サプリメントという言葉は、1994年にアメリカで定められた「ダイエタリーサプリメント健康教育法」という法律から名付けられ、食事で不足しがちな栄養素や、保健機能をもつ食品成分の補給・補完を目的とした食品として、広く知られるようになりました。
日本では明確な定義はありませんが、人では以下のように分類され、これらの一部がサプリメントとして販売されています。
・特定保健用食品(トクホ)
体の生理学的機能に影響を与える成分を含み、摂取することで特定の保健の目的が期待できる表示をする食品。販売するには、国の審査・許可が必要。
・栄養機能食品
特定の栄養成分の補給のために利用される食品。機能を表示できる栄養成分には、脂肪酸1種類、ミネラル6種類、ビタミン13種類がある。国への許可申請は不要。
・機能性表示食品
事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠を示した食品。販売前に消費者庁への届出が必要。
しかし、ペット用サプリメントにはこれらの表示は認められていません。
そのため、ペット用のサプリメントや栄養補助食品などは、すべて「ペットフード」として分類されています。
犬の病気に関連するサプリメント・栄養素
① 運動器(関節)疾患
コラーゲン
コラーゲンは、軟骨を形成する成分の一つです。関節炎の犬に長期的に投与することで、疼痛を緩和する効果が期待できます。
コンドロイチン
コンドロイチン硫酸は、関節軟骨の主成分で、腱・骨・椎間板などの組織の成分でもあります。
股関節や肘関節に関節炎がある犬に長期的に投与することで、疼痛を緩和する効果が期待できます。
グルコサミン
グルコサミンは、関節や関節軟骨の成長と修復に必要不可欠なアミノ酸の一種です。
コンドロイチンと併用することで、関節炎への効果が期待できます。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は、犬の軟骨の劣化や酸化ストレスを抑制したり、変形性関節症の犬において痛みや機能障害を改善するとされています。
② 皮膚疾患
必須アミノ酸(タンパク質)
皮膚や被毛の栄養には、必須アミノ酸のバランスが重要です。中でも「メチオニン」は、被毛を構成するタンパク質であるケラチンタンパクのシスチンを合成するため、重要とされています。
タンパク質不足になると、角化亢進や色素沈着、脱毛、毛の着色、換毛遅延などが起こるとされているので、バランス良く摂取することが大切です。
脂質(脂肪酸、セラミド、スフィンゴシン)
脂質は皮膚の再生や発毛のエネルギー源となり、皮膚のバリア機能にも関与します。
脂肪酸が不足すると、鱗屑(フケ)や角化異常、毛づやの低下、脱毛、脂漏症、痒み、感染性皮膚炎を起こしやすくなります。
必須脂肪酸は、慢性の犬アトピー性皮膚炎で一定の効果が報告されています。
ビタミン
ビタミンAが欠乏すると、鱗屑や脱毛、感染性皮膚炎などを起こし、反対に過剰に摂りすぎても鱗屑や粗剛な被毛の原因となります。
ビタミンEが欠乏すると、脂漏や細菌性皮膚炎、毛包虫症になりやすくなるとされています。
この他にもビタミンB2やB6など、さまざまなビタミンを過不足なく摂取することで、皮膚や皮毛の維持につながります。
ミネラル(亜鉛、銅)
亜鉛は、脂漏を改善したり、発毛を促したりする効果があります。ただし、亜鉛を摂取しすぎると銅の吸収が妨げられてしまうので、過剰な摂取は禁物です。(人では亜鉛:銅=10:1の比率での摂取が推奨されています)
③ 腎臓疾患
リン吸着剤、活性炭
慢性腎臓病では血液中のリンが過剰になりやすいため、食事療法でリンを制限したり、消化管の中でリンを吸着・除去する作用のあるサプリメント(炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)を摂取することが推奨されます。
また、活性炭は消化管内で毒素を吸着させ、便と一緒に排出させるはたらきがあります。
鉄剤
腎臓病にともなって貧血が生じている場合には、造血を促すホルモン剤とあわせて鉄剤を投与することが有効となります。
プロアントシアニジン
ブルーベリーやラズベリーなどのベリーに含まれるプロアントシアニジンはポリフェノールの一種で、高い抗酸化作用を持ち、腎機能の改善効果が知られています。
脂肪酸
モエギイガイという貝には、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸をはじめとする脂肪酸が豊富に含まれ、抗酸化作用があることが知られています。
さいごに
犬も人間と同様に、食生活が健康管理の基本となります。年齢や体質、持病に合った適切な食事をベースに、不足しがちな栄養素や治療のために摂取が推奨されるサプリメントなどを上手に活用すると良いでしょう。ただし、中には処方薬との飲み合わせに注意が必要なものもあります。サプリメントを与える前には、かかりつけの動物病院で相談してみましょう。
参考:ペットサプリメント活用ガイド /EDUWARD Press
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