犬には、犬種によって「かかりやすい病気」があり、そのうちの多くは遺伝性疾患であるといわれています。

遺伝性疾患とは、変異した遺伝子によって引き起こされる病気のことで、その遺伝子が親犬から子犬へと引き継がれることにより、病気も遺伝していきます。

 

純血種の犬は、同じ犬種同士を限られた地域の中で交配されることが少なくないため、変異した遺伝子を引き継ぎやすくなってしまうことから、遺伝性疾患を発症する確率が高まります。

ここでは、犬の代表的な遺伝性疾患について解説します。

 

 

進行性網膜萎縮症(PRA)とは?

進行性網膜位縮症とは、眼の中にある網膜という組織の異常により、視覚が次第に低下し、最終的に失明に至る眼の病気です。

 

好発犬種

ミニチュア・ダックス・フンド

トイ・プードル

チワワ

アメリカン・コッカー・スパニエル

ヨークシャー・テリア

 

上記以外のどんな犬種でも、発症する可能性があります。

 

◆どんな症状がみられるの?

初期は、「暗いところで見えづらそうにする(夜盲)」という症状が特徴です。暗い場所で物にぶつかったり、つまずく、不安がってあまり動かなくなる、夕方や夜の散歩に行きたがらないなどの症状がみられます。そして次第に、日中や明るいところでも、視覚が失われていきます。

また、二次的に白内障を発症することもあります。

 

◆何歳から発症するの?

6歳前後から発症することが多いとされていますが、早い子では1歳以下から夜盲の症状が現れることもあります。進行のスピードには、個体差があります。

 

◆どうやって診断するの?

診察室での行動や眼の動きなどをチェックして、視覚に異常がないかを確認します。

この他、光を当てて瞳孔の反応を見たり(対光反射)、眼に指や手を近づけた時にまばたきをするかを確認したり(威嚇まばたき反応)、網膜の状態を確認したり(眼底検査)します。

一部の犬種では、診断の補助として、遺伝子検査も利用できます。

 

◆治療法は?

病気が進行して失明してしまった場合には、残念ながら有効な治療法はありません。しかし視覚は低下していても、失明には至っていない場合には、病気の進行を緩やかにすることを目的に、お薬(抗酸化剤、循環改善薬など)やサプリメントが処方されるケースがあります。

 

◆予防法は?

残念ながら、この病気の予防法はありません。

遺伝子に異常が見つかっている犬やこの病気に罹患している犬は、繁殖をさせないようにしましょう。

 

◆愛犬がこの病気と診断されたら

失明を食い止めることはできませんが、比較的進行が遅い子も多い病気のため、愛犬が見えにくい状態に少しずつ慣れていけるように、また視覚が低下しても日常生活を送れるようにサポートしてあげましょう。

 

具体例

 鈴など音の出る物を使って、日常生活を送りやすくする(リードやお散歩バッグに鈴を付けるなど)

 おもちゃは音の出るタイプにする

 お散歩コースを変更しない

 室内の模様替えはしない

 家具の角には保護クッションなどを付ける

 犬の動線状に物を置かない

 ごはんや水の場所を変更しない

 階段などの危ない場所には、ゲートを付ける

 急に触ろうとすると驚かせたり恐がらせるおそれがあるため、声をかけてから接する

 

進行性網膜萎縮症は、治療をしても最終的には視覚異常が進行し、失明してしまう病気です。

この病気と診断されたら、失明までの時間をカウントダウンするのではなく、視覚が残っている間に、聴覚や嗅覚などを使った生活のトレーニングをして、犬も家族も生活しやすい環境を整えてあげましょう。

 

参考文献:犬の治療薬ガイド2020 私はこうしている(エデュワードプレス)

 

 


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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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