胃の運動障害のことを胃アトニーといいます。
胃アトニーとはどんな病気?
胃アトニーとは、胃の動きが悪くなってしまう病態で、「胃の蠕動運動の低下」と「胃の拡張障害」が関連しています。
胃には、口から摂取した食べ物を消化し、十二指腸へ送るはたらきがあります。これは、蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる筋肉の収縮によって行われていますが、この蠕動運動が低下すると、十二指腸への食物の輸送が遅くなり、胃の中に食物が長時間停滞してしまうことがあります。これによって、いわゆる「胃もたれ」のような状態になり、食欲が低下してしまうことがあります。
また、胃が十分に広がらないことを「胃の拡張障害」といいます。胃の拡張障害が起こると、胃に食物を貯留することができなくなり、嘔吐の原因にもなります。
胃アトニーの原因
原因となる疾患
・慢性胃腸炎
・機能性胃腸症
・胃潰瘍
・パルボウイルス性腸炎
・膵炎
・糖尿病
原因となる薬剤
・ビンクリスチン、シスプラチンなどの抗がん剤
・アトロピン
・オピオイド系鎮痛薬(モルヒネ)
・プレドニゾロン(高用量)
その他
・食事(脂肪分の多い食事など)
・ストレス
・開腹手術による侵襲(とくに消化器の手術後)
人ではこの他に、甲状腺機能低下症、肝不全、腎不全、がん(がん性悪液質)などの原因として挙げられており、犬でも原因となる可能性があります。
胃アトニーの症状
最もよくみられる症状は、食欲不振です。
嘔吐を伴う場合もあり、胃アトニーによる嘔吐は空腹時よりも食後に起こることが一般的です。
胃アトニーの診断
食欲不振や嘔吐は、他のさまざまな病気でもみられる症状のため、まずが原因となる基礎疾患がないかどうかを中心に、身体検査や血液検査などの検査を進めていきます。
また、原因となる薬剤の投与歴がないかを調べます。
胃アトニーの診断においては、X線検査、バリウム造影検査、超音波検査などの画像検査や、上部消化管胃内視鏡検査(胃カメラ)が有用です。
その際、異物や消化管の腫瘍などによって起こる「機能的イレウス(胃腸の一部または広範囲に麻痺やけいれんを起こし、食物の流れが止まってしまう状態)」との鑑別が重要となります。
胃アトニーの治療
原因となる基礎疾患がある場合にはその治療を、原因となる薬剤を投与している場合には休薬を行います。
消化管の運動機能を高める薬や、胃の消化を助ける薬、胃酸の分泌を抑える薬などを症状に応じて使用します。
これらの薬で治療をしても食欲の改善がみられない場合には食欲増進剤を、嘔吐がみられる場合には制吐薬を使用することがあります。
これらの治療と並行して、食事療法を行います。できるだけ低脂肪の食事に変更し、「少量ずつ」「こまめに」与えるようにします。この際、ふやかしたフードをミキサーなどで流動状にすることで、胃から十二指腸への輸送をスムーズにすることが期待できます。
食欲がない状態が続いている場合には、チューブフィーディング(経鼻カテーテルや胃ろうチューブの設置など)を検討します。
胃アトニーの予後
基礎疾患がある場合には、原因となる疾患の経過により予後は異なります。
薬剤によって起こった胃アトニーは、多くの場合休薬することで回復することが期待できます。
外科手術の後にみられる持続的な胃アトニーは、一般的に予後はあまり良くありません。
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