犬の眼科検査は、問診や視診から始まり、必要だと思われる検査を順序立てて行います。
ここでは、動物病院で一般的に行われる眼科検査について解説します。

 

 

問診

まずは問診を行います。

 犬の品種、年齢、性別、予防歴、既往歴、親や兄弟犬の眼疾患の有無など

 眼の症状について:いつから始まったのか、症状があるのは左右どちらの眼か、治療中の場合には使用している点眼薬や内服薬についてなど

 眼以外の症状について:元気や食欲の有無、体重の変動、飲水量、嘔吐や下痢の有無、痙攣などがないかなど

 

 

視診・触診

詳細な眼科検査に入る前に、犬の全身や顔全体をくまなく観察します。

 顔全体を観察し、眼球の大きさ、向き、瞳孔のサイズ、充血や眼脂(目やに)がないかなどを確認します。

 症状のある方の眼だけでなく、必ず両方の眼を観察して左右に差がないかを確認します。

 まぶたや眼の表面なども同時に観察します。

 歩き方や体型、皮毛や皮膚の状態なども観察します。

 

 

 

基礎神経学的検査

眼に何らかの症状が見られた場合、その症状が眼だけの問題なのか、それとも脳神経の異常によって引き起こされているのかを検査する必要があります。
そこで、神経学的検査と呼ばれる以下の4つの検査を行います。

 

①威嚇反射

眼の前にものを近づけた時に、目をつむるなどの防御反応が正常に起こるかをみる検査です。
明るい部屋と暗い部屋の両方で行います。

 

②対光反射

眼に光が入った時に、瞳孔を小さくしてそれを調節する反応(縮瞳)が正常に起こるかをみる検査です。部屋を暗くして行います。

 

③眼瞼反射

まぶた(眼瞼)や眼球の表面に物が触れた時に、まばたきなどの正常な防御反応が起こるかをみる検査です。

 

④眩目反射

まぶしい光が急に眼に入った時に、眩しがったりまばたきをするなどの正常な反応が起こるかをみる検査です。部屋を暗くして行います。

 

 

涙液量測定

シルマーティアテスト(STT)と呼ばれる検査で、専用の検査紙を1分間まぶたに挟み、しみこんだ涙の量(涙液量)を測定します。

乾性角結膜炎(ドライアイ)や慢性角膜炎、眼瞼炎などの診断に用いられます。

 

成犬の正常値:18.64 ± 4.47〜23.9 ± 5.12 mm /分

 

 

眼脂培養検査・角結膜の塗抹検査

細菌・真菌・ウイルスの感染などにより、眼の表面に炎症がみられる場合や、結膜や角膜に腫瘤(できもの)がみられる場合には、眼脂や眼の表面を専用の綿棒などで拭い、検査をします。

 

 

角結膜染色試験

角膜や結膜の上皮に傷(欠損)がないかを調べる検査です。

専用の蛍光色の染色液(フルオレセイン染色液)を眼に滴下し、ブルーのライトを当てると、欠損している部位が染まってみえます。

角膜潰瘍などの診断に用いられます。

また、このフルオレセイン染色液を滴下してから1分程度で染色液が鼻に抜けてくるかどうかを観察することで、鼻涙管(涙の通り道)が閉塞していないかを調べることができます。(鼻涙管疎通試験)

 

 

スリットランプ検査

スリットランプ(細隙灯顕微鏡)検査は、眼球の断面構造を弱拡大して観察することができる検査です。まぶた、角膜、結膜、前房、虹彩、水晶体、硝子体までの細やかな病変を観察できます。

 

 

眼圧測定

眼圧測定は、緑内障の診断に有用な検査です。
通常、眼球は眼房水と呼ばれる液体によって眼の中の圧力(眼圧)が一定に保たれているため、眼圧を測定することで緑内障(眼圧上昇)やぶどう膜炎(眼圧低下)などがないかを調べることができます。

 

犬の正常値:19.2 ± 5.9 mmHg

 

眼底検査

眼の一番奥の方にある、網膜や視神経乳頭などを観察するための検査です。
表面からは見ることのできない部位を、凸レンズ(倒像鏡)という特殊なレンズとライトを使用して検査します。

主に網膜剥離や進行性網膜萎縮(PRA)などの診断に用いられます。

検査を行う前に「散瞳薬」を点眼することで、詳細な観察を行うことができます。ただし、散瞳薬は眼圧が高い場合には使用禁忌とされているため、散瞳薬を使う前には必ず眼圧測定が必要です。

 

 

眼球超音波検査

眼球に表面からエコーを当てて、眼球の大きさを計測したり、眼の中の構造に異常がないかを観察するために行われる検査です。

眼底検査と同様に、表面からは見えない部分の観察に適しています。

網膜剥離や水晶体脱臼、眼内の腫瘍などの診断に用いられます。

 

 

参考:眼科診療のてびき 眼からウロコーイラストと写真で学ぶ眼科ー新装版
/都築圭子著 /EDUWARD Press
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フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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