アメリカよりも寛容

ヨーロッパでは多くの公共交通機関で犬連れが許可されています。一方、この点アメリカはかなり厳しく(意外ですが!)、ほとんどの鉄道会社で犬はお断りとなっています。
スウェーデンもヨーロッパの例に漏れず、バス、電車、フェリーなどで犬・猫の持ち込みはOKとなっています。ただし動物アレルギーの人が多いので、そこはやはり公共への配慮が必要。指定された場所に座る必要があります。
列車であれば普通車(グリーン車で動物を許可しているところはなし)でかつ動物連れ許可の車両のみ。椅子の下におさまらないほどの大型犬であれば、子供料金を支払わなければなりません。長距離フェリーでは、動物を連れてもいいキャビンかあるいはサロンがあるので、そこで一緒に時間を過ごします。もちろん、外のデッキは根本的にどこを歩いてもいいことになっています。バスの場合は、動物指定席というのはないのですが、アレルギー者を考慮してできるだけ後方の席に座ることが求められています。

このようにペットが入ってもいい車両には「犬OK」のサインがドアについている。このドアを素早く選んで乗り込む必要あり!スウェーデンのとある駅にて。

ケージに入れなくとも

日本から遊びに来た人と一緒に我が愛犬であるレトリーバーのラッコとストックホルムの地下鉄に乗ったことがありました。するとその人は
「ケージに入れなくてもいいのね?そのままペットを連れ込めるんだ!」
と感嘆していたのを覚えています。が、本当は私の方が驚いてしまいました。
−そうなんだ、日本ではいちいちケージに入れなくてはならないのだ!!−

日々のトレーニングの成果

スウェーデンの飼い主はケージに入れなくても公共機関を使えるようにするために日常努力をしていることも知っていただきたいと思います。

いくら犬連れがOKだからといって、環境に慣れさせるためのトレーニングも行わず普段は部屋にいれっぱなしで飼育している犬をいきなり電車やバスに乗せることはやはり不可能です。さらに慣れない場所に来たために、ストレスを感じてリードを引っ張る、吠えるというような私たちが望まない行動を見せることもあるでしょう。

動物にはまず「環境慣れ」というトレーニングが大事、子犬、若犬の時から人混みに出るという練習は欠かせません。これはいわばドッグカフェに出る前の練習とほぼ同じものと言ってもいいでしょう。
飼い主のお願いが出たらスイッチをオフにしてリラックス、落ち着くこと。このトレーニングは家庭でも試してみるとよいでしょう。

たとえば夕食の家族団欒時にケージに入れずにテーブルの側で静かに愛犬を待たせることはできますか?まずはこんな簡単な練習からはじめ、徐々に難度をあげ最終的には公共の場で行います。電車やバスの通路は狭いだけに、きちんと横を歩く、という癖をつけておくのも大事です。

もしかして粗相を恐れている…?

何故日本ではなかなか公共の乗り物へのペット連れが許されないのか、日本の外に住んでいる私の目で気がついたことがあります。犬の排泄について、日本ではあまりにも多くの人がナーバスになっていることではないか、ということです。だからこそケージなしで犬を電車などに連れてくることが世間でなかなか受け入れられないのではないか…? 犬を飼っていない人は
「まさか犬がトイレを覚えるわけがない」
という恐れを持っているようにも思えるのです。これは犬の初心者飼い主にも同様に言えています。

トイレトレーニングもばっちり!

実際犬は排泄と住む場所をきちんと分けることができる動物です。それを知らずに、部屋の中での粗相を恐れ、ケージやサークル飼いにしている人も多くいるようです。ケージの中でポロンとうんちを落としている犬、室内なのに後脚をすぐにあげてマーキングをするオス犬を日本に来た際に何度か見ました。
正直言ってすごく驚きました。これはスウェーデンではほとんど見ることがない現象です。スウェーデンの飼い主はサークルで囲って犬を住ませることがない分「トイレは絶対に外!」というしつけを徹底させます(もちろんおしっこシーツも普及していません)。
よって公共の乗り物についても、犬は意外にすんなりと「室内」と理解するようで、それで粗相の心配もほとんどないというわけです(しかし若い犬の場合、時には「やっちゃった〜」が起こりますが!)。

 

「公共の乗り物への犬連れOKの社会」には犬と人との関わり合いについて実は多くのことが凝縮されています。犬が外の環境で怖がらずに自信を持って歩くことができる、オンとオフ(リラックス)のスイッチを持っている、そしてトイレ・トレーニングが出来ている…。そしてこれらタスクをこなしていく過程で犬はさらなる信頼を飼い主に寄せるようになります。いわゆる犬と人のチームができるというわけですね。
「犬を許容してくれない!」と社会を責める前に、私たち飼い主が自分でできることはたくさんあるというわけです。こうして自らを磨いていればいずれ社会全体が犬を飼う人々への理解を示してくれる日が来るのではないのでしょうか?

ライター

藤田 りか子

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