しなやかな体で鞭のように美しく走る姿が印象的なウィペットは、イギリス原産の犬種です。ドッグレースのために生み出され走ることに特化していること、またその性格はとても穏やかで落ち着いていることから「紳士的なスプリンター」とも呼ばれています。

ここではそんなウィペットの歴史や特徴、性格、一緒に暮らす上での注意点、かかりやすい病気について詳しく解説します。

 

ウィペットの歴史

ウィペットはグレーハウンドを祖先とするイギリス原産の犬種です。

19世紀初頭のイギリスでは、畑に現れる野ウサギや小動物を追う狩猟犬をつくる目的で、大型のグレーハウンドと小型犬種の交配が行われていました。この当時のイギリスでは、ブル・ベイティング(牛追い)や闘犬、ウサギ追いなどの見世物が娯楽として流行していましたが、1935年にこれらが禁止されると、人々の関心は競馬やドッグレースへと移るようになりました。富裕層の間では、競走馬や大型のグレーハウンドたちによるレースが人気を博しましたが、大型の動物を飼育するには多大な費用がかかるため、労働者階級の庶民にはなかなか手の出せない娯楽だったそうです。そこで庶民たちは、飼育しやすいサイズのレース犬を作出すべく、狩猟犬として活躍していた小型のグレーハウンドに、マンチェスター・テリア、ベドリントン・テリア、ホワイト・テリアなどを掛け合わせて品種改良を行いました。こうして、誕生したのがウィペットの原型となる犬種であり、1891年にイギリスケンネルクラブに「ウィペット」として正式に登録されました。当初はドッグレースを中心に活躍していましたが、その美しい容姿は次第にドッグショーでも注目を集めるようになり、世界中に愛好家が誕生していきました。

 

全身を鞭のように滑らかにしならせて走る美しい姿から、「鞭(whip)」や「鞭を打つ(whip up)」になぞらえて、whippetと名付けられたと言われています。

 

ウィペットの特徴

 

走るために生み出された犬種ならではの無駄のない筋肉と骨格を持ち、空気抵抗の少ない流線型の体型をしています。短距離では時速65kmを出すほどの走力を誇り、前足と後ろ足をそれぞれ揃えて、全身の筋力を使ってしなやかに走る「ダブルサスペンションギャロップ」という美しい走り方をします。

細長いマズルと小さな頭、スラリと伸びた四肢、全身の引き締まった筋肉は優美さを感じさせます。耳は後ろ側に寝かせて折りたたむ様な形が特徴の小さな垂れ耳で、「ローズ・イヤー」と呼ばれています。

 

大きさ

イタリアン・グレーハウンドと一見よく似たフォルムをしていますが、大きさは全く異なります。

大型のグレーハウンドと小型のイタリアン・グレーハウンドの中間くらいのサイズの中型犬で、JKC(ジャパン・ケネル・クラブ)の規定によると、体高はオスで47〜51cm、メスで44 〜47cmが標準です。

 

被毛・毛色

きめの細かい艶やかな短毛で、体にぴったりフィットするようなシングルコートの毛質です。

ホワイト、グレー、ブリンドル、明るめのブラウンなどさまざまな毛色があり、色がミックスされているものも認められています。

 

寿命

ウィペットの平均寿命は12〜15歳と言われています。

 

ウィペットの性格

ウィペットはサイトハウンドの中でも吠えることが少なく、とても静かで落ち着いた犬種です。家族への愛情が深く、人や他の動物への攻撃性も少ないとされ、スポーツの場面では持ち前の運動能力と競争本能が顔を出すこともありますが、それ以外の場面では非常に社交的で、争いを好まない優しい犬種と言われています。

 

しつけ・散歩

ウィペットは従順で落ち着いた性格のため、トレーニングのしやすい犬種です。走ったり体を動かすことが大好きなので、アジリティなどにも向いています。トレーニングにおいては褒められるとどんどんやる気を出すタイプで、強く叱られるのは苦手です。

運動量を必要とする犬種なので、散歩は1回30分以上、1日2回は連れて行ってあげましょう。ドッグランなどで思い切り走らせてあげることも、ストレス発散や筋力維持に効果的です。ただし、一度走り出したらぐんぐん加速するスプリンター体質なので、ストップや呼び戻しの指示を覚えさせることや、クールダウンさせるためのトレーニングは必須で行いましょう。

 

ウィペットと一緒に暮らす上での注意点

 

見た目の通り、とても寒がり

ボリュームのない短毛かつ皮下脂肪の少ない体を持つウィペットは、とても寒がりな犬種です。冬場は暖房の効いた室内で過ごし、散歩の時には洋服などで体を保護してあげましょう。反対に、夏場は冷房を効かせすぎないように気をつけましょう。

 

十分な運動を

犬界のスプリンターであるウィペットは体を動かすのが大好きな犬種です。日々の散歩に加え、「走りたい!」という気持ちを発散させてあげる場を積極的に設けてあげると良いでしょう。

 

 

ウィペットのかかりやすい病気

 

遺伝性疾患は比較的少ない犬種と言われていますが、体質的に注意したい病気をいくつかご紹介します。

 

皮膚疾患

被毛が短く薄いウィペットは、寒さに弱いだけでなく皮膚をバリアしてくれるものが少ないので皮膚疾患に注意したい犬種です。皮膚のバリア機能が低下すると、膿皮症マラセチア性皮膚炎などの感染症にかかりやすかったり、アトピーアレルギーなどによる皮膚症状が現れやすいと言われています。体温調節のためのみならず、夏の日差しや冬の乾燥から皮膚を保護してあげる目的で、服を着させてあげるとよいでしょう。

 

肥満

被毛が薄く寒がりで、体温が低下しやすいため、皮下脂肪を蓄えやすい犬種です。

走ることが大好きなウィペットは、体重が増えてしまうと足腰への負担がかかりやすくなってしまいます。また、「肥満は万病のもと」と言われるのは犬も人も同じ。食事管理や適度な運動を日頃から心がけ、適性体重をキープすると良いでしょう。

 

*詳しくは『愛犬の肥満、放置していると大変なことに!【獣医師が解説】』をご覧ください。

 

膝の病気

トップスピードでは持続65kmで走ることのできるウィペットは、運動時の足腰への負担がかかりやすい犬種です。特に、カーブしているコースをダッシュしたり、ダッシュからの急なストップ、激しい段差の上り下り、ハイジャンプなどは膝の関節やその周りの靭帯などへの負担が大きく、関節炎や膝蓋骨脱臼、前十字靭帯の損傷・断裂などの疾患につながります。ドッグランなどを利用する際には、周りに障害物がないか、足場やコースは悪くないかなどを確認し、過度にスピードが出過ぎないように気を配りながら運動させてあげましょう。

 

★「うちの子」の長生きのために、年齢や季節、犬種など、かかりやすい病気や、症状や病名で調べることができる『うちの子おうちの医療事典』をご利用ください。

☞例えば、下記のような切り口で、さまざまな病気やケガを知ることができます。  

再発しやすい

長期の治療が必要

初期は無症状が多い

命にかかわるリスクが高い

生涯かかる治療費が高額

高齢犬に多い

病気の進行が早い

緊急治療が必要

入院が必要になることが多い

かかりやすい病気

他の犬にうつる

人にうつる

予防できる

子犬に多い

 

犬種別病気ガイド』でウィペットを調べる

犬は種類や体型、年齢によってかかりやすい病気・ケガが異なります。犬種別病気ガイドでは、犬種ごとのかかりやすい病気や特徴、飼育ポイントなどをご紹介しています。

ウィペットの特徴

ウィペットの飼育のポイント

ウィペットのかかりやすい病気・ケガ

ウィペットの保険金請求事例

フクナガ動物病院 獣医師

福永 めぐみ

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