犬のからだは人間と同じように、普段の食事や水から水分や栄養を摂取して、生命を維持しています。そのため、何らかの原因で水分や栄養が不足した場合には、それらを点滴で補う必要があります。
点滴とは
点滴とは、輸液剤とよばれる液体の注射薬を、少量ずつ投与する方法です。
輸液剤には、水分や電解質(ミネラル)、糖分(ブドウ糖)などさまざまな成分を含むものがあり、用途に応じて種類を使い分けます。
点滴が必要なのはどんなとき?
点滴が必要となるのは、主に何らかの原因で体が脱水状態になっているときや、自力での水分摂取が難しいとき、出血などが原因で急速に体液を喪失しているとき、手術や検査のために水分摂取ができないとき、などです。
・下痢・嘔吐
・消化管出血
・熱中症
・腎臓病
・低血圧、ショック状態
・手術や検査の前後
など
点滴の種類
ここでは入れる場所(静脈、首の後ろ)、内容(入れるもの)、目的、所要時間を解説します。
犬の点滴には、主に2つの投与方法があります。
① 静脈点滴
人の病院で行われる一般的な「点滴」でイメージされるものと同様の点滴方法です。
血管(静脈)の中に点滴の針(留置針)を挿入して固定し、そこから輸液剤を入れます。
犬や猫では、前肢や後肢の血管、頸静脈などを使います。
この時に使用される留置針にはさまざまな長さや太さのものがあり、犬の大きさや血管の太さなどによって使い分けます。この針に輸液ラインと呼ばれるチューブを連結し、自動輸液ポンプなどを用いて、投与する量や速度を調整しながら輸液剤を体内に流します。
静脈点滴のメリットは、血管にダイレクトに輸液剤を投与することができるため、確実に血管内に水分やミネラルを入れてあげることができます。
そのため、吸収も早く、効果も速やかにあらわれます。ショック状態などの緊急時には、迅速に大量の輸液を投与したり、留置針からさまざまな薬を投与することも可能です。
また、一般的には自動輸液ポンプを用いて、投与する速度や量を正確に調整できるため、心臓などへの負担を考慮しながら点滴を行うことができます。
ただし、静脈点滴は血管内に持続的に輸液剤を投与するため、最低でも半日以上の入院が必要になります。
緊急性の高い状態や、入院管理が必要な状態の動物では、多くの場合静脈点滴が選択されます。
② 皮下点滴
皮下点滴とは、犬の皮下に輸液剤を投与する点滴方法です。
投与する部位は、肩甲骨の間(両前肢の肩と肩の間)など、皮膚が伸びやすくつまみやすい部分に針を刺します。投与する量は、犬の体重や状態によって算出します。
静脈点滴は入院管理が必要なのに対し、皮下点滴は短時間で行うことができるので通院で行うことができ、場合によっては自宅でも実施することができます。
皮下点滴を行う代表的なケースには、一過性の下痢や嘔吐による脱水、食欲不振、慢性腎不全の治療などが挙げられます。
特に慢性腎不全の犬では、頻繁に点滴をする必要がある場合も多く、通院(外来診察)時に皮下点滴を実施したり、皮下点滴のやり方をかかりつけの病院で教わりながら自宅で実施するというケースも少なくありません。
静脈点滴と比較して短時間で実施できるので、犬への負担が少ないことや、費用的な負担も少ないことがメリットです。
ただし、はかりなどを使用しない場合には投与量の正確性が低いことや、輸液剤に混ぜられる注射薬は限られているため、薬を投与する際にはその都度針を皮下に刺さなければならないのが、静脈点滴との違いです。
また、皮下点滴の効果は静脈点滴に比べると緩やかで、血圧を維持したい場合などにはあまり有効ではありません。
愛犬に点滴治療が必要となった場合、愛犬の性格、体格、現在の病気の状態などを総合的に考慮し、どの方法が良いのかを主治医と相談して決めることをおすすめします。
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