概要

肺気腫とは、犬の体の中で酸素と二酸化炭素を交換する機能を果たしている肺胞という組織が壊れて、肺に溜まった空気を押しだせなくなる病気です。

肺は本来ぶどうの房のように沢山の小部屋(肺胞)が集まって出来ています。大人の人間の肺胞の数は、2-3億個とも言われています。肺胞では前述の通り、酸素と二酸化炭素の交換を行っていますが、小さい小部屋をたくさん作ることで表面積を増やし、効率よく空気の交換を行うためにこのような構造になっていると言われています。

しかし、肺気腫は肺胞と肺胞の間の壁が壊れ、隣り合った肺胞同士が合わさることで、大きな気腔を形成し、更にこれが肺の中に沢山できる病気です。肺はスポンジのような構造と例えられることも多く、肺気腫になるとスポンジの穴が大きくなりスカスカになると言われています。

肺気腫になれば、正常に機能する肺胞が減ってしまうので、酸素を取り込むことが出来なくなり、息苦しくなります。また、正常な肺胞には元々は弾性があり、呼吸の度に膨らんだりしぼんだりして換気において重要な役割を果たしていますが、肺気腫になると肺胞に弾性がなくなってしまうので、肺に溜まった空気を送り出すことが難しくなり、大きな呼吸をしなくていけなくなるのです。

ひとたび壊れた肺胞は元のように再生しません。ゆっくりと進行していく病気です。

肺気腫は、人間では、喫煙が発症のリスクとなるとして大きな問題になっています。犬猫においては、受動喫煙というような形で関心が高まっています。

こんな症状がでたら要注意

  • 呼吸が荒くなる。
  • 以前は喜んでいた散歩を喜ばなくなった。
  • 運動を嫌がるようになった・すぐ休む(体力の低下)
  • よだれを垂らす。
  • 皮下気腫(皮膚の下に空気が溜まることで、首や胸のあたりに見られることが多いです。)
  • 激しく咳き込む

これらの症状が慢性的にあり、徐々に症状がみられて進行していくこともありますが、急性に発症することもあります。急性の場合は特に緊急性も高く、肺気腫は死に至ることもある恐ろしい病気です。気になる症状が見られた場合は動物病院へ行くことをおすすめします。

※これらの症状は肺気腫だけでなく、心臓疾患や他の呼吸器疾患でも見られることが多い症状なので、一度検査をすることをおすすめします。

原因

炎症や腫瘍

ウイルスや細菌の感染による気管支の炎症や、気管支の腫瘍に続発して、気管支とつながっている肺胞も障害をうけ、肺気腫になることがあります。

激しい咳・激しい運動

激しい咳や運動(激しい呼吸)によって肺胞が損傷し、肺気腫に発展することもあると言われています。(慢性的な呼吸器疾患を持っている犬は要注意です)

受動喫煙

人間と同様にタバコの受動喫煙によって、人間同様肺気腫のリスクは高まると言われています。副流煙は、タバコのフィルターを通さない分、有害性も高まると言われているほど危険です。その他、排気ガスなどの有毒ガスも肺気腫をおこす危険性があります。

加齢

加齢によって、徐々に肺胞がもろくなり、肺気腫が起こりやすくなると言われています。

治療方法

一度壊れてしまった肺胞は元のようには戻りません。そのため治療方法は根治を目指すものではないのです。

治療は、肺気腫が起こる原因となった疾患がある場合、まずその治療を行う必要があります。(気管支の炎症や腫瘍など)そして、対症療法を行います。これ以上悪化しないように、というイメージの治療です。生活においては、激しい運動を避けるだけでなく、飼い主さんがタバコを吸わないようにするなど、気をつける必要があります。呼吸困難が重症の時には、入院をして酸素吸入を行う必要もあるでしょう。(最近では家庭用のレンタルの酸素室もあります。)

予防法

タバコはやめましょう

タバコは肺気腫の要因になるため、家族で愛煙家がいる場合は何か対応を考えましょう。発症においてもタバコは悪影響であるだけでなく、刺激的な煙は発症後も悪い影響を与えることは間違いありません。犬の前では吸わないようにすることや、空気清浄機をこまめにつけるなどの工夫をしているご家庭は多いです。

激しい運動は避けましょう

一般的には、通常の散歩程度であれば問題はないでしょうが、あまりに過負荷の運動をさせることは避けましょう。特に年をとってきたら、無理に激しい運動は避けるのが無難です。

何か異変を感じたらすぐに動物病院へ行きましょう

呼吸が荒くなる病気、咳をおこす病気などは肺気腫に限らず、様々な病気で起こります。これらの症状が出る場合、動物病院ではレントゲンの撮影が最低限必要になるでしょう。病気によっては薬などの治療によって、犬自身のQOL(生活の質)が大きく改善されることが望める病気もあります。また、放置しておけば命に関わる可能性のある病気もたくさんあります。きちんと動物病院を受診することが大切です。早期発見を心掛けましょう。

アイペット獣医師

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