かゆいというのは犬にとってとてもストレスになります。「掻かないほうが良い」なんていう配慮はできませんので、満足するまで・皮膚がぼろぼろになるまで掻き続けます。つまり、かゆいという辛い症状はいち早く気づき取り除いてあげないといけないのです。今回はそんな「アレルギー性皮膚炎」という病気について確認をしたいと思います。
アレルギーとは
体には、外部から入ってきた異物を排除しようとする「免疫」という機能が備わっています。「免疫」は、体を守ってくれる大切な機能ですが、それが過剰に働いてしまった結果、害のないものにまで反応し、体に悪影響を起してしまいます。これを「アレルギー」と言います。つまり体のSOSのサインなのです。
ご存知ですか??アレルギーコップ説
コップの大きさをアレルギーの許容量とし、注がれる水をアレルゲン物質とします。コップの大きさは人により違います。アレルゲン物質が蓄積し、コップから溢れるときに症状として現れるという考え方です
かゆそう・掻いているという症状は、実は「アレルギー」という体のSOSサインかもしれません。かゆみがひどすぎてストレスがたまり、性格が攻撃的になってしまうような可哀想なケースもあるんです。このようなサインをいち早く見つけてあげることで犬の辛さやストレスをとってあげられるかもしれませんね。
こんな症状がでたら気をつけて
- 夜中じゅうずっと体を掻いている
- 仕事から帰ってきたら目の周りがはげてしまった
- 前肢をずっとなめている
- 汚れていないのに耳を気にしている
- 顔をカーペットにこすりつける
アレルギー性皮膚炎とはどういったものなのでしょうか?アレルギーには大きく分けて2つあります。1つは食餌性アレルギー、もう1つは環境性アレルギーです。
食餌性アレルギー
原因と症状
食餌性アレルギーとは字のごとく食べたものに対してアレルギー反応を起こし症状をだす病気です。主としてタンパク質(お肉や小麦や卵等)に対して発症します。症状は主にかゆみで、耳や口周りだけに出る事もあれば、全身をかゆがったりと様々です。掻くことで、さらに、皮膚炎を起こすこともあります。また、ごはんが腸粘膜に触れることでアレルギーをおこし、嘔吐や下痢などの消化器症状が認められることもあります。
食餌性アレルギーの症状
- かゆみなどの症状は1歳未満に発症した
- 便の回数が1日3回以上
- 季節に関係なくかゆがっている
- 眼や耳、口の周り等の顔面から、お腹・指の間に至る全身をかゆがる
- 下痢や吐き気などの消化器症状がある
診断
原因となる食物を特定することです。かゆみが出た時に、普段と違うものを食べていないかなど振り返って考えてみることは、とても大事です。病院であればアレルギー検査もとても有効な方法だと思います。アレルギー検査は費用がかかるものの、何に対してアレルギーを起こしているかを目で見て判断できる可能性が高いです。しかし、食餌性アレルギーはアレルギー検査では異常がでてこない場合もあるので獣医師と相談して決めていきましょう。その他の方法して、除去食(じょきょしょく)試験(しけん)というのがあります。
これはアレルギーの原因となる食材を使用していないごはんを食べることで皮膚の状態が良くなるか否かを調べる試験です。これにより、かゆみの原因が食物なのかどうかを判断していきます。この試験の方法は、除去食試験用のフード(アレルギーを起こさないくらいまでタンパク質を分解して作っている)、または1度も食べたことのない食材を使用したフードを、それのみで1カ月以上あげていかなくてはなりません。
治療と予防
原因となる食物が特定できたのであれば、その食品に触れないことです。また、アレルギー食を使用することでかゆみは抑えられるかもしれません。アレルギーを発症していない場合でも、フードの原材料や品質にはこだわった方が良いと思います。アレルギーを発症させない方法があれば一番良いのですが、残念ながら現時点で有効な予防法はありません。しかし、症状が出ていない段階でのアレルギー検査をすることで今後の予防や対策を考えることはできるかもしれません。
環境性アレルギー
原因と症状
環境性アレルギーはいわゆるアトピーです。ハウスダストや花粉、カビなどを吸引したり接触することでアレルギーを発症します。顔・四肢・お腹などに強い痒みを引き起こします。そのかゆみにより掻き壊すことで、湿疹(膿皮症といいます)や色素沈着(皮膚自体が黒くなってしまう)などの経過をたどる場合があります。
診断
いつ、どこで一番かゆみを引き起こしているのかを探っていきます。例えば、「お散歩から帰ってくると…」とか「夜、寝室に入ると…」ということです。アレルギー検査はかなり有効です。目で見て、何に対してアレルギーを起こしているのかを特定することができます。
治療&予防
アレルゲンとなる物質に接触(皮膚に付着したり、鼻から吸い込んだり)することでかゆみが引き起こされるので、シャンプーをしてあげたり、家の中の掃除をすること、そして空気清浄機などは効果的になるケースが多いです。しかし、環境性アレルギー(アトピー)は完治しない病気なのでステロイド剤や免疫抑制剤(免疫を抑え込むお薬)などを使用しないといけない場合もあります。また、皮膚のバリア機能を高めるフードや体質改善のための漢方など様々な治療方法がありますので、十分に相談して決める必要があります。現時点での唯一の根治治療(完治できる可能性のある治療)といわれているのが「減感作(げんかんさ)療法(りょうほう)」です。これは、アレルゲン物質を特定したら、そのアレルゲンを薄めた注射を徐々に濃くしながら摂取していくことで体を慣らしてしまおうという体質改善を目的とした治療法です。興味がありましたら動物病院に相談しましょう。
アレルゲンとなりやすい
- ダニ
- ハウスダスト
- カビ
- 花粉
などを寄せ付けないよう、日頃からこまめに掃除をしたり使っている布製品の洗濯をすることはとても重要なアレルギー対策となります。
アレルギーというのは症状の出方や重症度が犬ごとに違います。そして1度や2度の診察で治るような病気ではなく、一生付き合っていかないといけない可能性が高いです。獣医師と納得するまでじっくり話をしていく必要があります。一生付き合っていく可能性のある病気だからこそ良い治療に早くたどりつくことが大事です。
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