東日本大震災から10年が経過した今でも震源付近で強い地震が襲ったり、大雨や台風などの自然災害が身近に発生するなど、日ごろ、備えの大切さを実感される方も多いのではないでしょうか。発災時には、まずは自分の身を守ること、公助も人の救護が基本となることから、ペットへの支援を受けるのは難しい状況になることが想像できます。アイペット損害保険株式会社の調査(※)では、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、ペットと同伴避難についての課題など、ペットのための防災対策の重要性をあらためて認識させられる結果が出ています。ペットの安全と健康を守り、他者に迷惑をかけずに災害を乗り越えていくため、飼い主として、今、備えておくべきことは何かを、考えておきましょう。

 

※【調査概要】調査対象:全国の犬・猫飼育者 調査人数:男女1,041名 

調査期間:2021年2月10日~18日 調査方法:インターネットによるアンケートを実施

 

あなたは、ペットのための防災対策をしていますか?

何かしらの対策をしている飼い主は21.6%(かなり+している)

 

「災害を想定して、ペットに関する防災対策を何かしているか」を尋ねたところ、何かしらの対策をしている飼い主さんは21.6%、「全くしていない」飼い主さんが42.9%と、飼い主さんによって備えの差がみられました。

 

 

犬飼育者さんの回答では「「待て」や「おすわり」など基本的なしつけができている」がトップで、いざというときすぐに同行避難できる態勢と避難時の飼養への意識が伺えます。また、2020年の調査と比較すると、犬・猫飼育者とも「ペット用の防災グッズを揃えている」「在宅避難ができるよう、家具やケージ固定、落下防止などペットのための防災対策によって自宅の環境を整えている」がそれぞれ大幅に増加しました。

 

 

ペットのために現時点で備えている防災グッズは?

 

1位は、犬・猫飼育者とも「フード(おやつ含む)・飲料水」が8割を超え、次いで、犬の飼い主さんは、2位「リード」、3位「トイレ」、4位「ケージやクレート」、5位「ブランケット」、以下「食器・紙皿」「おもちゃ」「ハーネス」と続きました。自由回答では、「避難生活ができる車」「保存のきくフードなどの備蓄」などの声もあがっています。

 

 

今の備えに追加するとしたら何を揃えますか?

 

 

 

「今後、今の備えに何を追加するか」との問いには、犬・猫飼育者ともに「フードや飲料水」がトップで、猫飼育者では「避難先で使うトイレ用品(猫砂、排泄物を処理するためのビニール袋等)」「迷子になった時の写真・迷子札」という順で、ライフラインや避難することを意識した回答が上位を占めました。

 

 

最寄りの避難場所はペット連れで避難できるか知っていますか?

 

「自宅から最寄りの避難場所がペットを連れて避難できるか」を尋ねたところ、「知らない」と回答した方が大半を占め、「知っている」と回答した方は23.7%にとどまりました。「知っている」と回答された方のうち約8割は、「最寄りの避難場所のペットの受入れ体制」についても認知されており、避難を想定した意識の高さが伺えます。一方で最寄り避難場所は「建物の中に一緒に入ることはできない」が半数以上となり、ペットの受入れ体制について課題を感じる結果となっています。

 

 

ペットとの避難生活での心配事は?

 

「ペットと一緒に避難生活を送ることを想定した場合、ペットに関する心配事」を尋ねたところ、犬・猫飼育者ともに「他人や他のペットとのトラブル」「慣れない場所でのトイレ」が上位で、昨年と同じ回答が並びました。その他、自由回答でも、「吠えること」「鳴き声」「迷惑をかけること」など、周囲への配慮に関する心配事などが並んでおり、避難生活における心配事は、犬・猫飼育者共通のようです。

 

 

「同行避難」と「同伴避難」の違いをご存知ですか?

 

「災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所まで避難すること」

 

上の文章を提示し、それが「同行避難」「同伴避難」どちらに当たるかを尋ねたところ、正解の「同行避難」を選択した方は、昨年よりも3.9ポイント増の55.7%で、認知・理解度はゆるやかな増加を示しました。「避難所運営ガイドライン」(平成 28 年 4 月内閣府)によると「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指すと記載されています。「同伴避難」でも指定避難所でペットを同室で飼養できるかというと、避難所によって異なることに留意が必要です。

 

 

 

「災害時ペットは飼い主との「同行避難」が原則とされていることを知っているか」の問いに対しては、昨年より1.8ポイント減となり、8割以上が「知らない」と回答しました。特に猫飼育者では、9割近くが「知らない」と回答しており、室内飼いが推奨される猫の避難については、「在宅避難」という選択肢への意識が高い可能性もうかがえました。

 

 

環境省発行の『人とペットの災害対策ガイドライン』によると、「在宅避難」は、災害の際に、まず、より安全な場所に緊急に避難し、その後、自宅の安全性が確認され、継続して居住できると判断した場合に、自宅で避難生活を行うことと記されています。避難生活の基盤が自宅にあれば、食事や入浴などの支援を避難所等で受けていたとしても「在宅避難」にあたり、災害時に被災者が集中し、指定避難所への収容が困難になる可能性がある大都市部などでは、強固な建築物に居住する住民に対し、在宅避難を薦めている自治体もあるようです。避難所でのペット受け入れがメディアでも取り上げられるなど、「同行避難」という言葉を耳にする機会は増えてきましたが、実際の自分たちの場合の避難行動を意識した備えが重要です。

 

 

2022年義務化で「マイクロチップ装着率」は5ポイント以上増

 

 

災害時の迷子対策として有効といわれているマイクロチップの装着有無についても尋ねたところ、装着率は全体で25.4%にとどまりましたが、昨年に比べ、犬・猫ともに5ポイント以上増加しました。

 

 

続いて、装着理由を尋ねたところ、犬・猫とも「装着されていたペットを迎え入れた」がトップで、昨年に比べ約8ポイント増加しました。現状のコロナ禍においては、旺盛なペット需要のもと、新たにペットを迎え入れた方も増えていると言われています。2022年の義務化施行(既に飼育している方は努力義務)を前に、販売元等での対応が進んでいることもうかがえます。

 

 

コロナ禍における「分散避難」の検討、避難所以外では「親戚・知人宅」がトップの約6割

現状のコロナ禍において災害が発生した場合、避難所に多くの人が密集するリスクを回避するため、安全面に十分配慮した上で「分散避難」なども検討する必要があります。そこで、「避難所以外にもペットと一緒に避難できる避難先、ペットの預かり先は確保しているか」を尋ねたところ、確保していると回答した飼育者は、約15%にとどまりました。さらに確保先では、犬・猫ともにトップは「親戚・知人宅」で、続いて犬飼育者は「車中避難」「在宅避難」、猫飼育者は「在宅避難」「車中避難」「かかりつけの動物病院」(「車中避難」「かかりつけの動物病院」は同率)の順となりました。また、自由回答では、「仕事先」「ペット専用の避難場所」「テント」などがあがりました。

 

 

続いて、「避難所以外で、ペットと一緒に避難できる避難先や、ペットの預かり先について、今後どのような選択肢を検討するか」を尋ねたところ、犬・猫ともに「在宅避難」「車中避難」「親戚・知人宅」がトップ3に並びました。その他、自由回答では、「愛護団体」「保護団体」「犬の訓練所」「別荘への疎開」などの候補も見受けられました。

 

 

各自治体のホームページなどでも、ペットと安全に避難する情報整備が進められております。万が一の時、大切なペットを守れるよう、行政が発信する情報に日ごろから耳を傾け、有事の際にペットとどのような行動をとるべきかを考えておきましょう。

またコロナ禍で災害が発生した場合、避難所に多くの人が密集するリスクを回避するため、地域の人たちと協力し、安全面に十分配慮した上で「分散避難」が必要となる可能性もあります。そのためにも、「避難所」以外にペットと一緒に避難できる避難先や、ペットの預かり先を確保しておくことも検討しておくとよいでしょう。

 

☞あわせて読みたい、ペットの防災関連コンテンツ

◆ PEDGE(ペッジ)のペット防災関連記事

 災害時において、飼い主に求められることは? ~現場から見えてきた課題~(一般社団法人 Do One Good 高橋一聡氏)

 飼い主としての真価が問われる「ペットの災害対策」(環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 室長 長田啓氏)

 月間1,000名が受講している「ペット救急救命講習」とは?(一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事 サニーカミヤ氏)

 

◆「みんなで作る!人とペットの避難所MAP FOR AOMORI」

アイペット損害保険株式会社では、2019年10月に青森県と動物愛護に関する連携協定を締結し、同県との取組みの中で、県内在住のペット飼育者が、災害時にペットと一緒に安全に避難するための避難所情報を共有するためのウェブコンテンツを公開しております。マップ上では、「同伴避難OK」の避難所など、県内にあるすべての避難所を確認することができます。

青森県の避難所情報を共有「みんなで作る!人とペットの避難所MAP FOR AOMORI」

過去の調査結果:ペットのための防災対策に関する調査(2020年)

 

☞【関連コンテンツ】アイペット獣医師監修『ペットと私の暮らしメモ』~ペットの防災~も、ぜひご覧ください。

アイペット損害保険株式会社

ワンペディア編集部

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