胃捻転とは、胃がねじれてしまうことにより突然起こる病気です。胃がねじれると胃や周囲の血管も一緒にねじれ、胃内容物が腸へ移動できず、ガスを発生しながら胃が膨らみ、周囲の臓器を圧迫してしまいます。どんどん進行し、ショックを起こすことにより発症から数時間で死に至ることもある疾患です。ごはんを食べた後に、急激に胃が拡張し、それが捻転に進行することがあります。多くの犬種で見られますが、大型で胸の深い犬種に比較的多く見られます。

注意が必要な犬種

特に罹患率が高い6種

  • グレート・デーン
  • ワイマラナー
  • セント・バーナード
  • ゴードン・セター
  • アイリッシュ・セター
  • スタンダード・プードル

危険度の高い犬種

  • アイリッシュ・ウルフハウンド
  • ボルゾイ
  • ブラッドハウンド
  • マスティフ
  • 秋田犬
  • ブル・マスティフ

こんな症状が出たら気を付けて

  • お腹をなめたり、気にするような行動
  • 気持ち悪そうに吐こうとするが何もでてこない
  • お腹が張っていて痛がる
  • 呼吸が荒い

食後すぐではなく数時間経った後に、このような症状があれば緊急を要します。夜遅くとも対応してくれる病院を日頃から探しておくと安心です。

原因

よく知られていませんが、いくつかの危険因子がわかっています。

危険度が高いもの

  • 前述したような胸の深い大型犬、超大型犬
  • 遺伝性

危険性が増すもの

  • 加齢(胃周囲の靭帯が伸びやすくなる)
  • 脾臓が腫れている脾腫、脾臓摘出の後
  • 行動:急いで食べる、噛まずに飲み込む、食べてすぐの運動
  • フードを高い所において食べさせる
  • ストレス:ドッグショー、飛行機など

治療

直ちに注射針などで拡張した胃の空気を抜き、積極的にショック治療を行います。胃の血流回復させ、獣医師の判断で手術が可能であれば手術をします。ねじれた胃を元に戻し、胃をお腹の中で縫合し固定する胃腹壁固定術が一般的であり、再発もないとされています。傷もある程度良くなるまで数日入院が必要ですが、手術の後は元気や食欲も出て、合併症や吐き気などもなければ退院できます。

予防

胃捻転は危険因子が重なると発症しやすくなります。フードを与えるタイミングは散歩の後にしたり、食後すぐの運動はさせないことは徹底し、リスクを出来るだけ減らした方が良いでしょう。またフードを与える回数が一日に一度だと、一回の量が多くなり、空腹で急いで食べると捻転が起こりやすい状況ができてしまいます。興奮しやすい子は少し落ち着かせ、フードはできるだけ一日2、3回に分けてあげる、与える時も少しずつにしたり、消化の悪いドライフードより消化の良い缶詰や手作りのものにするなど、できる事を実践してください。

体験談

獣医師が15人ほど働く比較的大きな動物病院で働いていたころ、診察に来る動物の数や種類も多い中で、実際に胃捻転に遭遇した経験はほとんどありません。それほどあまり一般的でない疾患であるということと、危険性のある大型・超大型犬を飼う飼い主さんは勉強熱心な方が多く、日頃から気を付けていらっしゃるからでしょう。記憶に新しいのは、1匹のシェパードの子のことです。飼い主さんはなんと病院のスタッフでした。その日は病院に連れて来ていたのですが、とても元気な子だったので、フードをあげた後、つい食後の運動としてそれほど広くはない病院の屋上で遊ばせてしまったのです。しばらくして急に具合が悪くなり、調べたところ胃捻転になっていたのです。幸いすぐに手術することができ、元気に帰って行きました。エルちゃんは成犬になって元々の飼い主さんからその若いスタッフに譲られたのですが、大型犬を飼うのは初めてだったということもあり、胃捻転について詳しく知らなかったようです。小型犬が多くを占める都会などではめったに診ることがなく、病院のスタッフでもあまり知識がない、ということもあるかもしれません。

アイペット獣医師

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