動物病院で処方される薬には、錠剤、粉薬、シロップ、点眼薬などさまざまな種類があります。内服薬は味や大きさもさまざまで、なかなかお薬をスムーズに飲んでくれない犬も…。
「大きな錠剤は飲ませにくいなぁ」「全部シロップだったらいいのに」と思う飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、その薬がその形で処方されているのには、それなりの理由があります。ここでは薬のタイプごとの特徴と、投薬のコツについて解説します。
薬にはどうしていろいろなタイプがあるの?
薬には、内服薬(飲み薬)や外用薬(軟膏・目薬など)、注射薬などがあり、同じ成分の薬でも形状を変えることで、使いやすさ(味や飲みやすさ、保存のしやすさなど)や効果が現れるまでの時間、効果の持続時間に違いが生じます。
また、内服薬の中にも、錠剤や粉薬、シロップなど、さまざまな形状のものがあります。
内服薬のかたちと投薬方法
錠剤・カプセル
動物病院で処方される薬で、最も多いのは錠剤タイプです。
錠剤は、薬剤を固めたもので、有効成分のみを固めたものと、有効成分に添加剤を加えてから固めたものがあります。持ち運びやすく比較的長期間保管でき、用量もわかりやすいので与えやすいです。また、苦味のある成分には、味を隠すようコーティングがされていたり、口・胃・腸と段階的に溶けることで効果を発揮するように工夫されたものもあります。
錠剤・カプセルのおすすめの投薬方法
1.フードに混ぜて与える
愛犬がお腹を空かせているタイミングで、いつものフードに混ぜて与えてみましょう。はじめは少量のフードに薬を混ぜ、薬が飲めたことを確認してから残りのフードを与えるとよいでしょう。また、少量の缶詰フードを肉団子状にし、その中に薬を埋め込む方法もあります。
※錠剤を細かく砕いたり、カプセルの中身だけを出して与えるのは、可能なものとそうでないものがあるので、動物病院で確認しましょう。
2.投薬補助トリーツや、服薬ゼリーを使う
フードに混ぜても気づかれてしまう場合には、投薬補助用のトリーツや服薬ゼリーに包んであげることで、薬の形や匂いに気づかれず投薬しやすくなります。
3.好きな食べ物と一緒に与える
1、2の方法で投薬が難しい場合には、普段食べ慣れている好物(さつまいも・かぼちゃなど)に埋めこんで与えてみるのもひとつです。ただし、下痢や嘔吐をしているときや、薬や好物の種類によっては飲み合わせが悪くなってしまう場合もあるので、あらかじめ獣医師に確認するとよいでしょう。
4.直接口の中に入れる
どうしてもうまく飲ませられない時には、直接口の中に投薬します。飲ませるタイミングは、愛犬がなるべくリラックスしている時が望ましいです。
①優しく声をかけたり撫でたりしながら、片手で上顎を、もう片方で下顎をもつ(犬歯の後ろあたりに指を当てるとやりやすいです◎)
②上顎を持ち上げて口を開かせる
③舌の奥の方を目がけて錠剤やカプセルを入れる
④鼻先を上に向け、口を閉じ、喉の辺りを優しくさする(スポイトなどで水を少量飲ませると、食道に薬が残らず、より確実に投薬ができます)
愛犬がごっくんとしたら投薬完了です。たくさん褒めてあげましょう◎
薬を入れる位置が手前すぎると、舌を使って上手にペッと出してしまう子もいるので、舌の奥の方を目がけて薬をおいてくるのがポイントです。
粉薬、シロップ
粉薬(散剤)は、錠剤やカプセルに比べて早く体内に吸収されるため、早い効果が期待できます。量の調節もしやすいので、体重や月齢に合わせて処方することができます。また、2種類以上の粉薬を混ぜ合わせて調剤することも可能です。
シロップ剤は、精製水などに薬の成分を溶かして作られることが多く、最も効き目の早いお薬です。ただし、長期保存にはあまり適していません。甘味がつけられているものなどは、犬が嫌がらずに飲んでくれることも多いです。
粉薬・シロップのおすすめの投薬方法
1.少量のフードに混ぜる
まずは少量のフードに混ぜて与えてみましょう。きちんと薬を全部飲めているかを確認するため、少量のフードで投薬するのがポイントです。薬を全て飲めたら、残りのフードを与えるとよいでしょう。缶詰やパウチなどのウエットフードや、とろみのついたフードなどに混ぜるのもおすすめです。
2.服薬ゼリーを使う
服薬ゼリーに粉薬やシロップ剤を溶かすことで、飲ませやすくなります。
3.ペースト状にして口の中に塗る
粉薬はごく少量の水で溶くとペースト状になります。これを上顎や歯茎に塗って、投薬することができます。
4.スポイトやシリンジで直接口の中に入れる
どうしてもうまく飲ませられない時には、直接口の中に投薬します。飲ませるタイミングは、愛犬がなるべくリラックスしている時が望ましいです。
①水に溶いた粉薬やシロップを、スポイトやシリンジで吸う
②犬歯の少し後ろにある歯と歯の隙間を狙って注入する(口は開けずに閉じたままで注入できます。スポイトの先端を入れる位置がポイントです!)
③注入したら、口は閉じたまま鼻先を少し上に向ける
愛犬がごっくん、としたら投薬完了です。たくさん褒めてあげましょう◎
薬の量が多い場合には、ごっくんとするペースに合わせて、無理なく少しずつ注入しましょう。
内服薬を飲ませるときの注意点
・フード以外の食べ物を使って飲ませる場合には、飲み合わせに注意が必要です。薬の効果に影響を与えてしまったり、苦味を強くしてしまう組み合わせもあるので、事前に獣医師に確認しましょう。
・錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出して与えると、薬の効果を弱めてしまう場合があります。処方された状態のまま飲ませるのが難しい場合には、獣医師に相談しましょう。
・内服薬が食道などに残ってしまわないよう、投薬後は水を飲ませるようにしましょう。
・高齢犬などでは特に、投薬の際に誤嚥してしまう可能性があります。粉薬やシロップをスポイトで与える時には、無理に一度に注入せず、犬の様子を見ながら少量ずつ投与するようにしましょう。
点眼薬の上手なさしかた
「犬に目薬をさすのは難しい」「目薬の袋を見ただけで逃げてしまう」という飼い主さんの声を聞くことも少なくありません。犬の目薬は、恐怖心を与えずにさしてあげることが大切です。おすすめの方法はこちらです。
1.犬を後ろ向きでおすわりさせ、動かないように保定する(撫でたり優しく声をかけながら保定すると、犬がリラックスして投薬がしやすくなります)
2.利き手でない方の手を下顎に添えて、犬の顔を少し上に向ける
3.利き手の親指と人差し指で点眼薬を持ち、残りの指を使って犬のまぶたを少し開く
(嫌がる場合は無理にまぶたを開こうとせず、顔を上に向けた状態で点眼してみましょう)
4.点眼薬の容器が犬の視界に入らないよう、後ろから点眼する
注意点
・容器の先端が、犬の目やまつ毛に触れないように注意しましょう。
・目から点眼薬がこぼれたら、拭き取ってあげてください。
・2種類以上の点眼薬をさす時は、5分以上間隔をあけましょう。
まとめ
投薬は、愛犬にとっても飼い主さんにとっても多少なりとも負担を伴いがちです。投薬方法に不安があったり、うまく投薬ができなかった場合には、かかりつけの動物病院で相談してみましょう。また、投薬の前後に撫でたり褒めてあげたりすることで、愛犬がリラックスした状態になり、次の投薬を成功させやすくなります。
その子にあった上手な投薬方法を見つけることができたら、愛犬にとってのご褒美タイムになったり、飼い主さんにとっても良いコミュニケーションタイムにもなるので、ぜひいろいろな方法をトライしてみてください。
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