
慢性腎臓病や心臓病などの慢性疾患(持病)を持つワンちゃんのご家族の方から多くご質問をいただくのが「様子を見ていいのか、すぐに病院へ行くべきか」というご相談です。
慢性腎臓病や心臓病は、残念ながら「完治」する病気ではありません。
体調が良い時と悪い時の「波」とうまく付き合っていく必要があります。
その波を見極めるためのポイントをまとめました。
「いつもの波」か「悪化のサイン」かを見分ける
持病があると、日によって少し食欲が落ちたり、寝てばかりいたりすることがあります。
まずは、その変化が「一時的なもの」なのか「進行の兆候」なのかを観察しましょう。
〇 観察のポイント:愛犬の様子のものさしを持つ
「なんとなく元気がない」を数値化すると、判断がしやすくなります。
食事量: いつもの何割程度食べたか?
呼吸数: 寝ている時の1分間の呼吸数はいくつか?(後ほど詳しく解説します)
活動性: お散歩の距離や、家の中での動き方はどうか?
これらの項目は、調子が良い時でもカレンダーなどに記録しておくことをおすすめします。

受診を急ぐべきチェックポイント
心臓病と腎臓病では、注意すべきポイントが異なります。
【心臓病】ポイント:「呼吸」
心臓病の悪化は、命に関わる「肺水腫(はいすいしゅ)」につながる恐れがあるため、以下のような様子がみられたらすぐに動物病院を受診しましょう。
安静時の呼吸数が増えた
寝ている時の呼吸が1分間に30回以上の場合は、要注意です。
咳の回数が増えた
とくに夜間や明け方に「カッカッ」と喉に詰まったような咳をするようになった。
動きたがらない
すぐにお座りをしてしまう、散歩の途中で動かなくなる。
舌の色が悪い ※緊急性の高いサインです。
舌が紫っぽく見える(チアノーゼ)。

【慢性腎臓病】ポイント:「嘔吐と水分」
腎臓病は、体内の老廃物が排泄できなくなる「尿毒症」のサインを見逃さないことが大切です。
嘔吐の頻度
月に数回だったのが、週に何回も、あるいは1日に何度も吐くようになった。
水の飲み方の変化
急に飲む量が増えた、あるいは逆にパタッと飲まなくなった。
尿の変化
急に尿量が増えた、色の薄い尿が出るようになった、あるいは尿が出にくくなった。
口臭の変化
口からアンモニアのような独特な臭いがする。
食欲・よだれの変化
急に食欲が低下した。よだれが増えた。
顔つきの変化
目が落ち窪んでいる(脱水のサイン)。

アドバイス~日々の様子を動画撮影しておく
日々の様子をスマートフォンなどで動画撮影しておくことをおすすめします。
とくに「呼吸の様子」や「歩き方」は、診察室では緊張して隠れてしまうことが多いため、獣医師にとって非常に重要な診断材料になります。
心臓病や肺の疾患を持つワンちゃんのご家族にとって、「安静時呼吸数」を知ることは、命を守るためにとても大切です。
診察室では緊張して呼吸が速くなってしまう子が多いため、リラックスしている自宅での数値が、真の判断材料となります。
〇 自宅でできる「安静時呼吸数」の測り方
「安静時」とは、ワンちゃんが寝ている時、または動かずに完全にリラックスしている時を指します。
測るタイミング
• ベストタイミング: ぐっすり眠っている時。
• 避けるべきタイミング: 運動後、ごはんの直後、室温が高い時、興奮時など。
測り方
ワンちゃんの胸や脇腹が「膨らんで、元に戻る」のを1回と数えます。
• 手で触れると起きてしまう場合は、少し離れたところから観察して数えましょう。
• 「15秒間」数えて、その数を4倍すると簡単かつ正確です。
判断の目安
・一般的に、健康な犬の安静時呼吸数は1分間に15〜25回程度です。
・1分間に30〜40回の場合は要注意。愛犬の様子を注意深く観察し、必要に応じてかかりつけの動物病院に相談してください。
・1分間に40回を超える場合は、すぐに動物病院へ連絡し、受診してください。

「迷ったら受診」しましょう
ご家族が「この程度で病院に行っていいのかな?」と迷われることもあると思いますが、慢性疾患において「いつもと何かが違う」というご家族の感覚は、病気の進行のサインである可能性が少なくありません。
早めに受診をすることで、病態の変化を速やかにに把握することができ、点滴や投薬の調整などを行うことで進行を緩やかにすることができる可能性があります。そのため、いつもと違う様子を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
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