愛犬の毛が少しずつ薄くなり、お腹がぽっこりしているのを見て、老化が原因だと思う飼い主さんは多いのではないでしょうか。しかし、もしも愛犬の手足が痩せているのなら、それはクッシング症候群という病気かもしれません。病気になると痩せていくというイメージがあると思うのですが、この病気にかかると愛犬が太っていくように見えるので、なかなか病気だと気付かない場合があるのです。 

ここでは獣医師監修のもと、クッシング症候群のメカニズムと治療法について解説します。 

クッシング症候群とは? 

腎臓の近くに、小さな豆粒の形をした「副腎」という臓器があります。ここではさまざまなホルモンが作られているのですが、その中の一つに「コルチゾール」というホルモンがあります。このコルチゾールが過剰に分泌されることによって、体中の臓器に悪影響を及ぼしてしまうのがクッシング症候群なのです。6歳以上の高齢犬がかかりやすいと言われています。 

コルチゾールって何をするの? 

体の様々な臓器が活動するためにはエネルギーが必要です。このエネルギーは、体内のブドウ糖(=血糖)を元に作られているので、体は血液中のブドウ糖を常に一定に保つ必要があります。食事を長い間摂らなかった等の理由で、体内の血糖が少なくなると、このコルチゾールが分泌されます。 

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そして、血糖を保つために肝臓に働きかけ、肝臓内に蓄えてあるグリコーゲンをブドウ糖に変えて体内に放出したり、体内の脂肪や筋肉などを分解したりすることで、一定の血糖を保っているのです。 

クッシング症候群の症状 

コルチゾールが大量に分泌されてしまうと、必要以上に脂肪や筋肉、コラーゲンなどを分解して血糖に変えてしまいます。結果、クッシング症候群にかかると以下のような症状が見られます。 

 

□筋肉量が少なくなる 

□コラーゲン不足などによる脱毛や皮膚の石灰化 

□内臓を支える腹筋がなくなることで、腹部が下に垂れる(通称:ポットベリー) 

□大量にお水を飲み、大量におしっこをする 

□無気力 

 

また、血糖が常に高い状態が続くため、糖尿病をはじめとして、膀胱炎や皮膚炎などの感染症・血栓塞栓症・脂肪肝・肝不全などのような病気を併発しやすくなります。 

クッシング症候群の原因と治療法 

司令塔に異常がある場合 

副腎は下垂体という部分からの指令を受けて、コルチゾールを分泌しています。この司令塔の役割を果たしている下垂体に異常があって、コルチゾールの分泌量をコントロールできなくなっている場合は、薬を使った治療がメインになります。 

下垂体は脳のほぼ真ん中の底部にある臓器で、コルチゾール以外にも体に必要な様々なホルモンの分泌を指示する司令塔です。下垂体がどんどん大きくなっていき、脳神経を圧迫するような場合には手術で下垂体を切除する場合もありますが、手術のリスクが非常に高いため、一般的にはコルチゾールの生成を阻害する薬を使う治療がメジャーです。ただし、これは根本的な治療ではないので、生涯薬を飲み続けなければならなくなります。 

製造元に異常がある場合 

コルチゾールを作っている副腎自体に腫瘍(がん)があった場合も、コルチゾールが大量に分泌されることがあります。 

この場合は、手術や放射線治療で腫瘍を取り除かなければなりません。しかし、この手術は非常にリスクの高い手術になります。通常の動物病院ではできないこともあるので、手術や放射線による治療を希望される場合は、それらの治療が可能な病院を紹介してもらう必要があります。手術によって腫瘍を取り除くことができれば、薬を飲む必要はありません。 

クッシング通常

 

クッシング異常

 

クッシング症候群は、治療をしないままにしておくと、死に至ることもある恐ろしい病気ですが、適切な治療を受けさせてあげれば病気とうまく付き合ってくこともできます。 

大切なのは病気に気付き、きちんと治療をしてあげること。特に高齢犬に多い病気と言われているので、飼い主さんは正しい知識を身につけて、愛犬を支えてあげてくださいね。 

アイペット獣医師

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